韓国人はなぜ、平気で約束を破るのか 法治が根付かない3つの理由

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日本には見抜かれている

――政権に従属する司法。裁判所からの「大脱走」も当然ですね。

鈴置:韓国では三権分立が音を立てて崩壊しています(「ついにヒトラーと言われ始めた文在寅 内部対立激化で『文禄・慶長』が再現」参照)。が、日本ではほとんど報じられていません。

 話を文在寅会見に戻します。「困惑発言」により、日本では大統領が対日姿勢を変えたように受け止める向きも出ましたが、基本はまったく変わっていません。会見では以下のようにも語っています。

・そんな土台の上に(日本政府に支払いを命じた)今回の判決を受けた被害者のおばあさん(元慰安婦)たちも同意できる、そんな解決法を見出すよう、韓日間で協議を進めます。強制徴用(自称・元徴用工)の問題もやはり、同様です。

 要は、「日本は元慰安婦らが満足するまで譲歩せよ」との従来の主張を繰り返しているに過ぎないのです。むしろ、米国や日本を騙す手口は悪質化しています。

――韓国メディアは文在寅発言をどう報じましたか?

鈴置:保守系紙は「舌先三寸で騙そうとしても、日本にはすっかり見透かされているぞ」と攻撃しました。

 朝鮮日報は社説「『日本企業の資産現金化はよろしくない』と急変、4年間の反日狩りはどうした」(1月20日、韓国語)で以下のように主張しました。

・慰安婦合意破棄の張本人である文在寅大統領が、「両政府間の合意だった」と認めた。過去4年間、政府が繰り広げたのは何だったのか。結局、先も考えず国内政治に利用したに過ぎない。
・突然に態度を変えたのは、東京五輪に金正恩を呼んでもう一度南北ショーをやるには日本との関係改善が必要だからだ。「韓米日協力」を重視するバイデン政権出帆も影響を与えたろう。そんな心の中をのぞかせる振る舞いを日本はすべて見ている。恥ずかしい限りだ。

「約束破り」から目をそらす韓国紙

――「恥ずかしい限りだ」ですか……。

鈴置:この社説と同様に、「文在寅の下手な猿芝居は日本には見抜かれているぞ」と主張する論説が目立ちます。中央日報のコラムニスト、ナム・ジョンホ氏の書いた「【時視各角】リップサービスで日本が振り向くだろうか」(1月19日、日本語版)もそうです。

 東京五輪を利用しようと日本に突然「仲良くしよう」と言い出し、逆に怒らせてしまったではないか、と指摘したのです。

 興味深いのが、これらの政権批判が「もう日本を騙せないのに騙そうとしている」との戦術論に終始し、「国と国との約束を破った」という問題の本質に踏み込んでいないことです。ここに韓国の危うさがあります。

 国と国との約束を平気で破る――。こうした行動がどれだけ韓国の信用を傷つけたか、韓国人はまるで理解していない。日本からもう、まともな国として相手にされなくなったことが、まだ分かっていないのです。

 もし、日本が騙され続けていたら、保守系紙も「しめしめ」とばかりに、韓国政府ではなく日本にお説教を垂れていることでしょう。

法治とは相容れぬ儒教

――それにしてもなぜ、韓国人は平気で約束を破るのでしょうか。

鈴置:「いまだに儒教を社会の規範としているから」との説明が定説かと思います。不完全な人間を教えさとして「徳」ある人を作れば、社会も国もまともになる、というのが儒教の基本的な考え方です。

 法律で人の行動を規制し安定した社会を作るという法治の発想とは根っこで相いれないところがある。儒教国家にも法律はありますが、最終的な規範にはなりません。

 京都府立大学の岡本隆司教授は以下のように喝破しています。『米韓同盟消滅』第4章第1節「儒教社会に先祖返り」から引用します。

・ちゃんとした人の間では、守るべきマナーがある。これを「礼」と言い、ある種の強制力がある。ただ、建前としては自ら律するものであって「法」のように外からがんじがらめに縛りあげるものではない。
・徳治に長らく馴染んだ人々には、法律によって国を治める――法治主義は、とても窮屈に感じられるだろう。法は柔軟性がなく、人々を細かく縛るからだ。

 儒教社会で生きてきた韓国人には法治――決まり事を守ることが苦手です。韓国も西欧型の法制度を導入はしましたが、身に付いてはいないのです。

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