事件現場清掃人は見た レンタルボックスで練炭自殺した建築会社社長の“隠し事”とは

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 自殺や孤独死などで遺体が長期間放置された部屋は、目を覆いたくなるような悲惨な状態になる。亡くなった人の痕跡を消し原状回復させるのが、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。2002年からこの仕事に従事し、昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を出版した高江洲(たかえす)敦氏に、投資に失敗し、悲惨な最期を遂げた社長について語ってもらった。

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 FX(外国為替証拠金取引)が大流行したのは、今から10年ほど前のことだ。改めて言うと、FXとは証拠金を預け、それを担保にして外国為替取引を行う金融商品である。証拠金の最大25倍まで取引ができるため、ギャンブル性が高く、為替が大幅に乱高下すると、大損を被る個人投資家が続出した。

「当時、“FXで電車が止まる”と言われたものでした。FXで大損した投資家が、電車に飛び込むケースが相次いだからです」

 と語るのは、高江洲氏。

 実際、イギリスのEU離脱が決まった2016年6月24日、円相場が1ドル99円台まで急騰。その日の午前中からJR総武線、京王井の頭線、阪急神戸線などで人身事故が続出したことがあった。

「FXはギャンブルと同様に見られたため、自己破産ができないと思われていました。ギャンブルで負債を作った場合、破産法では原則として免責されないことになっています。そのためFXの失敗によって自殺が相次いだとも言われました」

レンタルボックスで練炭自殺

 10年前に亡くなった、40代の建築会社社長のケースについてこう振り返る。

「私は元々、この社長と知り合いで、事件現場の清掃をしている時、奥さんから電話がありました。『主人が家に帰ってこない』『どこへ行ったか、心当たりはないでしょうか』と。彼女の話によると、会社の経理担当者から電話があって、会社のお金がほとんど残っていないと言われたそうです。彼とは経営セミナーで知り合って、一緒に飲みに行ったりしていました。ベンツに乗り、派手なところがありましたが、根は真面目な人でした」

 奥さんからその1週間後、再び電話があったという。

「会社で借りていたレンタルボックスの中で、練炭自殺で亡くなった夫が発見されたというのです。レンタルボックスの管理会社から、異臭がするといってクレームがきたそうです。開けてみると、遺体が見つかりました。奥さんから、現場の清掃を依頼されました。一瞬、お断りしようかとも思いましたが……」

 結局、高江洲氏は清掃を引き受けた。

「レンタルボックス広さは1・8メートル×1・8メートルで、高さも1・8メートルありました。中にはベンツのスタッドレスタイヤが4本、高級ゴルフクラブが数セット、会社の伝票などがありました。社長は、ダンボール箱に寄りかかるようにして亡くなっていたようで、ダンボールには体液が染み込んでいました。床の木材も体液が染み込んでいたので、解体して全て張り替えました」

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