旭堂南春が日本で見つけた飲食店 美味しいNIPPON

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 好きな飲食店や好物の話を聞けば、その人の人となりが解るというもの。ゆえに「名は体を表す」ならぬ、「食は体を表す」なのである 。この企画では、外国籍の著名人の方々にご登場頂き、行きつけのお店をご紹介してもらいます! 意外なお店のチョイスに驚くこと必至! 彼らの食に対する感性と経験が垣間見えちゃうんです。第73回は、旭堂南春さん。今回は「かのや篠原」に伺いました!!

 維新の群像の中でも、坂本龍馬の存在は際立っている。水と油の関係だった薩長に握手させて倒幕に結びつけたわけだから、彼がいなければ、今も徳川の世か、内戦のドサクサに紛れ、日本は列強の植民地になっていたかもしれない。

 そして、この令和の時、上方に龍馬を題材とした「四天王寺の果たし合い」を得意の演目にしているメリケン女性講談師がいる。アトランタ出身の旭堂南春さんだ。

「中学生時代、お寺や神社が珍しく、着物もカラフルで、日本に興味が。さらに、アメリカで大学卒業後、日本史、特に幕末に目が向くようになり、重要人物が龍馬だと知ったのです」

「四天王寺の果たし合い」は、4代目旭堂南陵師匠の書き下ろし講談。舞台は大坂、勝海舟を狙う尊王攘夷の志士の企てが、龍馬の機転の利いた行動と、勝の度量の大きさで事なきを得るという話である。彼女に龍馬評を聞いてみると、「オレを殺しにきたのだが、なかなかの人物〜」という語りを枕に、

「行動力が日本人離れしている。身分の低い郷士なのに、上士に遠慮せず、問題解決を試みるところが魅力的」

 と、武士間の身分差という歴史的背景を踏まえての高評価だ。龍馬のふるさとである高知を何度も訪れたという南春さんだが、ここ大阪のお気に入りの店は、鹿児島料理の「かのや篠原」。というのも、寄席がある愛日会館から近く、高座に上がった後、帰りに、カウンターで焼酎のお湯割りを呑むらしい。

「高知では鰹の叩きを食べますが、ここでは薩摩揚げやキビナゴの天ぷらを頼みます」

 南春さんにとって、南海の幸がおいしいこの店は、コロナ禍で高座に上がる機会がなく落ち込んでる心を癒やす場となっているのかもしれない。

「講談は虚実を交じえて歴史を語る芸能ですが、ライブであることが大事。お客さんの表情を見られないのが残念ですが、最近は、YouTubeで、日本の昔噺の“桃太郎”を英語講談にして配信しています」

 日本の伝統芸能を、ネットメディアを使い、英語で配信するとは、これはまた龍馬譲りのアタマの柔らかさといえよう。

週刊新潮 2021年1月21日号掲載

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