40周年「イデオン」はなぜ忘れられたのか 「ガンダム」富野由悠季もうひとつの傑作

エンタメ 2020年12月26日掲載

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傑作「イデオン」は、なぜ祝われなかったのか

 アニメ監督・演出家の富野由悠季(79)の名声は、国内のアニメ関係者の中でも際立っている。「機動戦士ガンダム」の生みの親として広く知られ、2019年には文化庁長官表彰受賞、2020年にはアニメーション・オブ・ザ・イヤーの功労賞部門に選出された。19年6月からは福岡市美術館を皮切りに全国6会場の美術館を巡回する大規模展覧会「富野由悠季の世界」が開催され、話題を呼んでいる。

 現在、展覧会は富山県美術館で開催されているが、副題には「ガンダム、イデオン、そして今」とある。ガンダムに並び「伝説巨神イデオン」が、富野アニメの代表作であることを表している。

 しかし「イデオン」と「ガンダム」の知名度、人気の差は大きい。実際、今年が「イデオン」誕生40周年だったことを知る人は、そう多くはないだろう。目立った周年イベントも行われなかったので無理はないが、2019年に「40周年プロジェクト」として華々しい企画やイベントがいくつも実施された「ガンダム」とは対照的な扱いだ。もちろん、コロナ禍の影響もないことはないだろうが、ガンダムに関しては今年も「ガンプラ(ガンダムのプラモデル)」40周年企画が大々的に展開されている。

 事実、富野由悠季の知名度のほとんどは、1979年に誕生した「機動戦士ガンダム」とその後のシリーズに負っている。数多くのガンダムシリーズのなかでも、「機動戦士Ζガンダム」(85)、「機動戦士ガンダムΖΖ」(86)、「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」(88)、「機動戦士ガンダムF91」(91)、「機動戦士Vガンダム」(93)、「∀ガンダム(ターンエーガンダム)」(99)、そして劇場上映企画が現在進行中の「Gのレコンギスタ」と、富野が関わった作品は数知れない。そのキャリアの中心にガンダムがあると言っていい。

 もちろん、富野由悠季には「ガンダム」シリーズ以外にも、1972年の監督デビュー作「海のトリトン」や「無敵超人ザンボット3」(77)、「聖戦士ダンバイン」(83)といった傑作がある。ただその存在は「ガンダム」の圧倒的な知名度の前では霞んでしまっているのが実情だ。「イデオン」もそうだろう。

 そもそも放送当時から、イデオンの人気はガンダムと大きな差があった。ガンダムは40年の歴史を通し、続編、スピンオフ、ブランドの新展開などが絶えない。一方、イデオンは作品のストーリーの都合上(後述)、続編やシリーズ作品が作りにくい。そのあたりの事情も、人気の“格差”が生まれたのかもしれない。

大物クリエイターに愛され、絶賛される理由

 ところが、イデオンの熱心なファンは今でも少なくない。とりわけアニメ業界や名を成したクリエイターにビッグファンを表明する人は多い。

 たとえば2013年に「伝説巨神イデオン Blu-ray BOX」が発売された時には、「エヴァンゲリオン」の庵野秀明監督、「魔法少女まどか☆マギカ」の新房昭之監督、「亡国のイージス」の作家・福井晴敏が、イデオンファンとしてインタビューに答えている。2014年には「サマーウォーズ」の細田守監督が「伝説巨神イデオン」をテーマにWOWOWで富野由悠季と対談した。さらに遡れば、1999年発刊の「富野由悠季全仕事」で「踊る大捜査線」の監督・本広克洋がイデオンへの熱い想いを語っている。『精霊の守り人』の作者・上橋菜穂子がNHKの番組で大ファンであると公言したこともあった。また、アニメ業界を題材にしたTVアニメ『SHIROBAKO』では、「伝説巨大ロボットイデポン」なるイデオンを思わせる作品が、過去の傑作として登場する。

 これほど多くのクリエイターを惹きつけるイデオンとは、そもそもどういった作品なのだろうか。

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