「稲川会」「住吉会」で抗争勃発 2日連続で病院前に血だるまのヤクザが放置された訳

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 2日連続で、神奈川県、群馬県と距離が離れた別々の病院前に、血だるまになった男性が放置される恐ろしい事件が起きた。いずれも発見されるやすぐさま病院に担ぎ込まれたが、その後、死亡が確認された。実はこの2人、代紋を背負った現役の暴力団組員。ヤクザ映画のような血で血を洗う抗争事件が起きていたのだ。

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 最初の事件は12月5日、午後11時半ころに起きた。横浜市港北区の病院の正面玄関前に、全身に切り傷がある状態で放置された26歳の男性を病院職員が発見。すぐさま別の病院に担ぎ込まれたが、その後、死亡が確認された。

 第2の事件が起きたのはそれから11時間後の6日午前10時20分ころのことだ。場所は横浜から100キロほど北上した群馬県太田市龍舞町。やはり病院の正面玄関前で、病院職員が顔面から血を流した入れ墨の入った46歳の男性を発見したのだ。この男性もすぐに搬送されたが、手の施しようもなく帰らぬ人となった。

 社会部記者が解説する。

「神奈川で発見された男は、住吉会・幸平一家・加藤連合会・聡仁組の組員で、群馬の男は稲川会・山川一家・琉星興業の組員です。両県警は両組織の抗争事件とみて、死体遺棄容疑で捜査しています。2つの目の事件は、いわゆる『返し』ですね。やられたらやり返すのが、プライドをかけたヤクザの掟。5日未明に平塚市の路上でヤクザ同士が乱闘事件も起きており、関連を調べています」

歌舞伎町「スカウト狩り」でも注目を浴びた住吉会「幸平一家」

 有名暴力団組織の二次団体にあたる山川一家と幸平一家は、それぞれ「名門」として知られる組織だという。暴力団関係者が解説する。

「山川一家は川崎のソープ街、幸平一家は歌舞伎町と、いずれも大きな花街を根城にするイケイケの武闘派組織。幸平一家は、今年7月に歌舞伎町で発生した『スカウト狩り』でも注目されたばかり。十数人が徒党を組んで歌舞伎町を練り歩き、スカウトを見るや否や袋叩きにするやり方で、街一帯を恐怖に陥れた」

 両組織の抗争は今に始まったわけではなく、

「18年12月に、歌舞伎町の幸平一家『伊勢組』事務所のドアに向けて、拳銃で数発、撃ち込まれる事件が起きたが、あれも山川一家が動いたものと見られている。本当は幸平一家の『聡仁組』に撃ち込むはずが、間違えて別の四次団体の事務所に撃ってしまったんだとかウワサされているね。今回の抗争ではそれぞれ1名ずつ死者が出た段階で、翌7日にすぐさま『手打ち』が行われた。九州に拠点を持つ別の組織が仲介したようだ。とはいえ、犬猿の仲だから火種が完全に消えたわけでない」

病院の前に置き去りするのは我々の常とう手段

 それにしても不思議なのは、なぜそれぞれの組が同じ手口で、病院前に血だるまになった男性を置いていったのかという点だ。ヤクザといえど、せめて命だけは助けてやりたいという温情だったのだろうか。暴力団関係者は「いやいや」と一笑に付す。

「2人とも置き去りにされた時には既に死んでいたか、虫の息だったはず。あれは我々の常とう手段で、後で捕まった際に『運んだ時にはまだ息があった』とか『殺すつもりじゃなかった』と言い訳するための“保険”です。殺人罪ではなく、傷害致死にランクを落として懲役に行くためのね」

 そしてこう語るのだった。

「昔はよく、若いもん1人が全部背負って出頭に行く、なんて話がありました。今はもう、組のために体張って懲役から帰ってきたらヒーロー、なんてことはない。今頃、警察は必死に捜査しているだろうね」

週刊新潮WEB取材班

2020年12月8日掲載

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