「本当は日本で働きたい…」中国「千人計画」参加者の本音 ノーベル賞・本庶教授も日本の現状に警鐘

国際 中国 週刊新潮 2020年10月29日号掲載

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「働けるなら日本で…」

 中国政府が推進する「千人計画」は、世界中の優秀な研究者を好待遇で集めるプロジェクト。米国をはじめとする各国は科学技術を盗まれる懸念から警戒を強めているが、実は日本人研究者も多く参加している。その背景には、我が国の研究環境の劣悪さがあるという。実際に計画に参加する日本人たちの本音とは――。

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 中国政府は現在、学術研究に圧倒的なカネを投下している。科学技術の予算は、2016年度の時点で22兆3988億円と日本の6倍以上。20年前は、日本と中国は共に約3兆3千億円前後と拮抗していたのに、破竹の勢いで予算を投入し始めたのだ。

 中国トップ10に入る最難関大の一つである浙江大学で、サルなど霊長類の遺伝子を研究する高畑亨教授(43)によると、

「論文が掲載されたら報奨金を出すなど必死なのは、習近平国家主席が科学大国になると宣言していて、面子をかけて“論文掲載数世界一”を目指していることが背景にあります。そのこだわりは非常に強く、外国人の論文でも、中国の研究所や大学発の論文として発表させようという取り組みをしている。一方で、米国や日本の研究者は自分の研究結果が論文になればいいと思っているので、どの国から発表される形になろうが、その点はあまり気にしていません」

 とはいえ、「千人計画」に選出されると課せられるノルマは厳しいとも話す。

「論文を出さなければいけないプレッシャーはキツイですよ。自分の場合、与えられた研究費は5年分だけですから、それ以降は中国で企業や省のプログラムに応募しないとゼロになってしまう。自分を含めて中国に来た若手の研究者は、働けるなら日本にいたいというのが本音です。給料や研究費が高いから中国に行くのではなく、日本に研究者としてのポストがない。だから中国へ行くしかなかったのです」

中国からノーベル賞が続出?

 止まらない人材流出の影響はすでに表れ始めた。ニッポン人の受賞ラッシュが続いたノーベル賞で、今年はまさかのゼロ発表も決して偶然ではない。

「中国はいま、ほとんどノーベル賞の受賞者がいませんが、これから先は基礎科学の分野においても、どんどん出てくると思います。あと10年もしたら、目に見えて結果が出てくるんじゃないですか」

 と懸念を示すのは、16年にオートファジーの研究でノーベル生理学・医学賞を受賞した、東京工業大学栄誉教授の大隅良典氏(75)である。

「このままいけば、日本で活躍の場がないからという理由で、基礎科学者が中国に流出することが、今以上に増えていくと思います。中国は基礎科学の分野においても、お金の使い方、スピード感が違いすぎる。実際、私もお声がかかることがありましてね。年間で1億円の予算を確保しますとか、そのくらいの予算は我々の分野では使うものなので、ものすごく高額というわけではありませんでしたが、学生はヤル気も能力も高いでしょうから、魅力的ではあったけどお断りしました。日本でもそれなりに仕事ができていましたし、齢をとってから北京の汚い空気の中で生活すると思うと……」

 そう明かした上で、こんな警鐘を鳴らすのだ。

「私はかつて東大の理学部で植物学を研究していたから分かるのですが、20年ほど前なら中国は稲の研究など、作物の増産に結びつくような研究ばかりにしか予算がついていなかった。だから、言い過ぎかもしれませんが科学者として脅威を感じることはありませんでした。でも、今はまったく違います。基礎科学を大事にしており、何をやってもいいような自由がある。非常にレベルが高くなっており、量も質も敵いません」

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