暴力団の主たる資金源「特殊詐欺」にオドロキ判決 背景に「警察」「民暴弁護士」の活躍

国内 社会 2020年10月18日掲載

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被害総額が300億円を超えた特殊詐欺

「俺だよ、俺。会社の金を使い込んでしまって、今すぐ1000万円必要なんだ」「あなたのキャッシュカードが悪用されたようなので預かります。この紙に暗証番号を書いて下さい」――。

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 息子を騙って電話を掛けたり、金融機関の職員を装い自宅を訪問したりする手口で、主に高齢者をターゲットに多額の現金をだまし取る特殊詐欺。

 2000年代初頭から社会問題化し、2019年も被害総額は300億円を超えた。老後の蓄えを奪うだけではなく、被害者の尊厳までも踏みにじる卑劣な詐欺犯罪は近年、任侠を標榜する暴力団の主要な資金獲得源になっている。

 警察庁によると、19年に特殊詐欺に絡んで検挙された暴力団構成員や準構成員は521人で、特殊詐欺全体の検挙人数の約2割を占める。

 このうち現金の受け取り役などグループの末端では、暴力団組員の割合は1割強なのに対し、主犯格では4割近くに上っており、実に半数近くの事件で、背後に暴力団の影がチラついているのだ。

 そんな特殊詐欺と暴力団を巡る民事訴訟で、東京地裁が先般、主要団体の一つ指定暴力団・住吉会の最高幹部らに対し、原告の被害者らに約2億超の賠償金の支払いを命じる判決を下した。

 配下の組員が実行した特殊詐欺事件で、組織の代表者の責任を問う「組長訴訟」では、異例ともいえる高額な賠償金額となった。

 今回の訴訟と判決は、衰えることのない特殊詐欺の抑止となり得るのか。詳細をレポートする。

住吉会の最高幹部ら被告に対して2億円余の支払いを命じる判決

 東京都千代田区霞が関の東京地裁610号法廷前では、9月25日の昼過ぎ、傍聴希望者らが列をなした。

 新型コロナウイルスの感染予防対策で席数が制限されたとはいえ、法廷に入れきれない関係者もおり、間もなく言い渡される判決への注目度の高さが伺われた。

 原告は指定暴力団・住吉会系の組員が実行犯になった特殊詐欺事件で、750万円~7400万円の現金をだまし取られた高齢者やその遺族ら8人。

 被告には実行犯の組員らに加え、同会の西口茂男元総裁(故人のため現在は相続人ら)、関功会長、福田晴瞭特別相談役の3人の最高幹部が名を連ねた。

 午後1時5分、裁判長が判決を言い渡し、最高幹部を含む被告らは遅延損害金を含め2億2180万円の支払いを命じられた。

 被害者の精神的損害に対する賠償金こそ退けられたが、提訴時の請求額のほぼ全額の支払いが認められ、原告側の勝訴といえる内容だった。

 判決の詳細を述べる前に、原告らが提訴に到った経緯を振り返っておこう。

 訴訟の元となった特殊詐欺事件は、警視庁組織犯罪対策4課が、静岡、和歌山の両県警と合同捜査本部を組み、2014~15年にかけて摘発した。

 摘発された詐欺グループは、高齢者らに再生医療の研究開発を行う実体のない会社のパンフレットを送付し、電話で社債の購入を持ち掛けるなどの手口で、全国の170人から15億円以上を詐取したことが捜査で判明。

 住吉会の傘下団体の幹部ら組員8人を含む28人が起訴された。被害規模の大きさだけではなく、これまでもっぱら贈収賄や経済事件などの知能犯を扱う捜査2課の専売特許だった特殊詐欺捜査に、暴力団犯罪の専門集団の「4課」が本腰を入れたと印象づけた事件だった。

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