文在寅が国連で「同盟破棄」を匂わせ 激怒した米政府は「最後通牒」を突きつける

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真っ青の保守系紙

――真実は?

鈴置:分かりません。ただ、ホワイトハウスにつながる有力な専門家がここまで疑問を呈するのですから、それなりに注目を集めるでしょう。仮に指摘が正しいと認められなくても「トランプ政権が無理を承知で文在寅潰しに乗り出した」と見なされるに違いありません。

――「終戦宣言」に韓国の保守系紙は?

鈴置:真っ青です。中央日報は社説「非核化のない終戦宣言、安保空白を自ら招く=韓国」(9月24日、日本語版)で「非核化に向けた有意義な措置なしで終戦宣言を締結すれば、致命的な安保空白を自ら招く」と悲鳴をあげました。

 しかし、文在寅政権は馬耳東風。「離米」に突き進んでいます。統一部長官も駐米大使も「離米」を語った。日米韓の防衛相会談も拒否。その総仕上げとして大統領が国連で「離米」を宣言したのです(「文在寅が日米韓防衛会談を拒否、中国に忖度し堂々と米韓同盟を壊し始めた」参照)。

 さらに9月25日、康京和(カン・ギョンファ)外交部長官はアジア・ソサエティの会議で中国牽制用の集まり「Quad(日米豪印協議)」に参加するかと聞かれ「他国の利益を自動的に阻害するようないかなることも、よい考えではない」と米国の構想を批判しました。

 朝鮮日報の「康京和、米国のQuadに『よいアイデアでない』」(9月26日、韓国語版)が伝えました。

「離米」に向け背中を押した米中対立

――文在寅政権はなぜ今、「離米」に突き進み始めたのでしょうか?

鈴置:米中の角逐(かくちく)が激しくなったからです。米国との同盟を結んだままなら中国から叩かれる。それなら「中立」を宣言してしのぐしかない。左派政権とすれば、いずれ「離米」するつもりだったのだから、その時期を早めるだけなのです。

 文在寅政権は中国も北朝鮮も仮想敵と見なしていない。米韓同盟は共通の敵を失ったのです。そんな同盟が長続きするはずがない。特に、韓国からすれば、中朝から睨まれる負の同盟なのです。

 M・ポンペオ(Mike Pompeo)国務長官が10月上旬、日本を訪れ、Quadの外相会談に臨む方向です。その後、訪韓する計画もあると韓国紙が一斉に報じています。

 ポンペオ長官は韓国にQuad参加を求めるか、そうでないにしろ共同声明で中国批判に賛同する可能性が高い。果たして韓国が米国の求めに応じて、中国に弓を引くのか。それができないのなら、ポンペオ訪韓を断るのか――。

 韓国の目の前には、踏み絵が突き付けられているのです。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年9月29日掲載

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