「将棋と囲碁」子どもにやらせるならどっち? ビジネスに活きるのは 棋士の収入比較

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食っていけるのはどちらの「棋士」か

 確かに、羨望の眼差しを受ける棋士たちは、全体でみれば一握り。彼らが有名棋戦で勝ったとなれば数千万円の賞金が懐に入るが、棋界の両雄である羽生竜王と井山七冠で、収入を比べてみよう。

 まず日本将棋連盟によれば、2017年の獲得賞金・対局料で3位の羽生竜王は5070万円。一方の井山七冠はといえば、日本棋院発表の17年の獲得賞金・対局料ランキングでトップの1億5981万円だ。これで7年連続1位となり、デビュー17年目の井山七冠の生涯獲得金額は約12億円とされる。同じく羽生竜王は推定で約27億円を手にしているが、2人はキャリアも1回り半違うから、単純な比較はできない。総じて食べていけるのは、いったいどちらの世界の「棋士」と言えるのだろうか。

 一昨年に引退した将棋の田丸昇九段(67)が言う。

「約400人の棋士を抱える囲碁界の方が収入は少ないのでは。将棋は約160人の棋士がいるけど、将棋連盟、日本棋院と各々の母体に入るお金の額に大きな差異はないと聞いていますから、棋士数で割ったら将棋の方が有利でしょう」

 将棋界では現役棋士に連盟から基本給にあたる手当が支給されるそうで、

「支給額は、その年の名人戦で決まるクラス、他の棋戦の実績、棋士年数で査定されます。トップクラスで毎月50万円以上、そうでない棋士だと月数万円と開きがある上、実力が落ちれば引退となる制度です。囲碁界にはありませんから、厳しい実力社会ですよ」

 対する囲碁界はどうか。現役棋士の白石勇一七段(33)に尋ねてみたところ、

「囲碁は初段からプロになれるので間口は広いですが、将棋は四段からプロなので、なるのが大変という違いがあります。囲碁の棋士も日本棋院から毎月の固定給は貰えますが、実力に乏しい棋士なら月数万円といったところ。金額は、毎年の賞金・対局料ランキングによって査定されます。実力がこれからという棋士であれば、年間に獲得できる対局料は一般の会社員の月収くらい。病気など特別な事情で対局できなければもちろんゼロですから」

 それぞれ教室や政財界人への指導、講演などで糊口を凌いでいるが、それも実力あっての世界なのだ。

2020年7月18日掲載

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