泉佐野市はふるさと納税訴訟で国に逆転勝訴 ポイントは「法の遡及(そきゅう)」

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自治体を牛耳る驕った官僚たち

 最高裁は異例の口頭弁論を開いて同市と国双方の意見を聞いていたため「逆転勝訴か」と囁かれた。勝訴判決は小法廷5人の全員一致だったが「返礼品は社会通念上、節度を欠いていたと評価されても仕方がない」と苦言を呈し、林景一裁判官は「同市の勝訴となる結論にいささかの居心地の悪さを覚える」と異例の補足意見を述べた。蛇足でしかないだろう。

 最高裁まで争った異例の「国vs地方自治体」のガチンコバトル。合法を認められた泉佐野市が今後、節度のある運用をすればいいだけのことである。

 千代松市長は「以前のような寄付はもらえないかもしれないが、日本一の実績を上げてきたノウハウがある。法令を守りながら泉佐野市らしさやアイデアを出して取り組みたい」と意気込んだ。上京し、入廷した松下義彦副市長も「全面的な勝訴でほっとした。泉佐野市を応援してくださった皆さんのおかげです。地方自治全体にかかわることでしたが最高裁が地方自治を守っていただけた。喜ばしい判決。今後は指定を受けてふるさと納税のスタートラインに立てる」と語った。

 代理人の阿部弁護士は「一抹の不安はあったがよかった。もし原審が正しいということになれば、国の指導に従わない地方自治体は国に逆襲されて潰されてしまう。最高裁の死、司法の死、地方自治の死になり、専制国家になってしまう。そうなれば僕は最高裁から飛び降りるぞ、座り込みすると言っていたがそうならなくてよかった。僕もそろそろ(人生?弁護士活動?)終わりだから。最後の花道になった」とまで喜んだ。

 戦前は「泣く子も黙る」内務省、戦後は自治省が前身の総務省は「泉佐野市はめちゃくちゃやっとる」のような世論に乗じた一種、ポピュリズム(大衆迎合)でふるさと納税制度から泉佐野市を除外してしまった。法の原則を守らないやりかたは補助金支給など「地方自治体のことはすべて自分たちの権限下にある」と見下す国家官僚たちの驕りでもあった。

粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に「サハリンに残されて」「警察の犯罪」「検察に、殺される」「ルポ 原発難民」など。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年7月4日掲載

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