泉佐野市はふるさと納税訴訟で国に逆転勝訴 ポイントは「法の遡及(そきゅう)」

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新制度スタート半年前の実態を除外理由に

 総務省は規定際に「2018年11月から半年間に主旨をゆがめるような募集をしていた自治体は除外する」と告示した。ちょうど泉佐野市が返礼品を華美にしてゆき、昨年2月に返礼にアマゾンのギフト券を加え、返礼率も7割にアップしていた頃に重なる。新制度スタートに当たり半年以上前のことを問題視した、まさに「法の遡及」による狙い撃ちだった。

 泉佐野市が相談した国地方係争処理委員会は昨年9月、「除外決定を再検討すべき」と総務省に提言したが聞き入れられなかった。11月、同市は国を相手に除外の取り消しを求めて大阪高裁に訴えた。しかし高裁に「ふるさと納税の主旨に沿った運営に戻すため過去の取り組みを考慮したのは裁量の範囲内」訴えを退けられたため、上告していた。

関空バブルはじけ、窮地だった泉佐野市

 この日、最高裁第三小法廷(宮崎裕子裁判長)は、「(除外は)自治体に重大な不利益を生じさせる」として「告示は総務省にゆだねられている権限の範囲を超えている」と指摘。そして「過去の募集方法を除外理由とした告示は違法で無効」と国の違法性を認めて泉佐野市を勝訴させた。要は、「国は後出しじゃんけん」だったと断罪したのである。

 勝った千代松大耕市長は「市の主張を全面的に認めてもらい嬉しい。地方の自治にとって新しい一歩となる」と話し、敗れた高市早苗総務相は「判決の趣旨に従い、できるだけ早く必要な対応を行う」とコメント、泉佐野市が制度に戻ることになった。

 泉佐野市が異常なまでにふるさと納税を活用したのには背景がある。関西空港の対岸にある同市は関空オープンで企業進出を見込み巨額の公共投資をして豪華な箱モノを作り続けたがバブル崩壊で当ては外れる。市の借金は1500億円を上回り、財政再建団体転落の一歩手前となり、ごみ袋を一枚50円にするなど市民生活も圧迫していた。そんな同市にとって「ふるさと納税」の寄付金は救世主だったのだ。

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