【追悼】ジョージ秋山さん 「小沢一郎」「美保 純」ら語る『浮浪雲』の魅力

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まさに理想の男性像 女優 美保 純

 主演を務めたにっかつロマンポルノ「ピンクのカーテン」(1982年公開)の原作者が、ジョージ秋山さん。女優として世に出ることができたすごく大事な作品です。

 実は、私のデビュー作は大コケして、日活内でも「あの子は色っぽくない」などと、懐疑的な声が上った。ハマり役がない。でもヒット作を出して日活の看板女優にならなきゃ。そんな重圧を感じていた時に抜擢されて、結果ブルーリボン賞新人賞まで頂き、以降は順調にお仕事が舞い込むようになりました。

 14年に公開されたジョージ秋山さん原作の映画「捨てがたき人々」にも出演し、その後NHKの連続テレビ小説「あまちゃん」のオファーを頂き、すごくお仕事が増えた。私の人生の節目、ターニングポイントで常にジョージ秋山さんの作品との関わりがあって、ご縁を感じます。

 ジョージ秋山さんと初めてお会いしたのは、たしか「ピンクのカーテン」の宣伝を兼ねた週刊誌の対談企画。日に焼けた肌にサングラスという出で立ちで、ギラギラした雰囲気と圧倒的な存在感に包まれて……。この人の前で何を取り繕っても、見透かされてしまうだろうなと思わせるものがありました。決して口数は多くなかったけれど、「自分のイメージにピッタリの娘だ」って仰って、撮影前なのに褒めてくれたことを憶えています。

 お会いする以前から、私は兄の影響で『アシュラ』や『浮浪雲』といった作品をよく読み、どの作品も大好きでした。中でも『浮浪雲』の主人公・雲が本当に魅力的。着流し姿で女性をナンパするのに全くしつこくなく、ふわふわと漂う雲のよう。「この人はいったい何を見ているんだろう」って気になってしまう。まさに理想の男性像なのです。

 作品の中では、心がざわざわするような恋や、愛するがゆえの苦しみ、人間の動物的な一面がリアルに描かれています。浮気もそうですが、世間的には許されない男女の恋愛はずっと昔からあったのだろうし、それを二人だけの秘め事として耐え忍ぶという、ある種の潔さが表現されている。

 ロマンポルノが全盛だった昭和の時代、女といえば若くてキレイでおしとやかでなきゃ、というような固定観念が強かったんです。そういう風潮の中、私は「貞操観念がない人」「尻が軽い女」と思われるのがイヤで、男女の性に関する話題は、誤解を生むと思ってあまり口に出すことはしなかった。

 でも、ジョージ秋山さんは、その時代からずっと女も一人の人間であり、人格があるということを一貫して描いてこられた。だから私も女優として2度も原作の映画に出演できて、本当に嬉しかったですね。

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