コロナ禍で宗教法人に給付金はおかしくないか これだけの問題点

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 1人10万円給付、雇用調整助成金、さらに持続化給付金……。政府は新型コロナの感染拡大対策として、さまざまな形で国民に現金を出そうとしている。緊急事態宣言で働きたくとも働けないのだから、当然の処置だろう。だが、それが宗教法人にまで及ぶとなると話は別だ。ジャーナリストの山田直樹氏が、警鐘を鳴らす。

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「これで、本堂の修繕費用が少し賄えるんじゃないの?」

「檀家に頼んで、架空のアルバイト名簿を作っておけば、休業補償を申請できるんじゃないか……」

 こう本音を漏らすのは、檀家数3~400を数えるお寺の僧侶たちだ。

 コロナ禍によって、特例の“大盤振る舞い”となった雇用調整助成金。「解雇しないで従業員を休業させれば、手当の一部を国が負担する」というこの制度は、もともと申請が煩雑で、給付に至るまで半年待ちもザラだった。その間、企業は自力で持ちこたえなければならず、待たされた末に「不受理」というケースもあった。

 ところが今回、ざっくり言えば、全業種でパートや正社員といった雇用形態は問わず、労災保険や雇用保険に「加入」さえしていれば、1日8330円(上限)の調整金が支給されることになったのだ。これまでの「雇用保険加入6カ月間以上」という縛りも、あっさり取り払われた。休業計画書の事前提出という条件も、事後でもOKと大緩和。さらに安倍首相は“その額を1万5000円にまで引き上げたい”と答弁したが、この対象業種に「宗教法人」が含まれるというのだ。

 文化庁が日本宗教連盟へ宛てた情報提供文書には、こうある。

〈雇用調整助成金と同様に、本特例措置も基本的には宗教法人も対象となり、例えば、巫女さんなどをアルバイトで雇っている場合、その休業手当についても雇用調整助成金の支給対象となることが確認できましたので、情報提供させていただきます〉

 要するに、労災保険のみの零細宗教法人でも休業手当を出せば、調整金が出るし、アルバイト等でも構わないということになる。

 これの何が問題かといえば、わが国では政教分離が憲法で規定されているからだ。憲法20条で「いかなる宗教団体も、国から特権を受け……てはならない」と定めているし、89条では「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため……これを支出し、又はその利用に供してはならない」ともある。その原理・原則が、「際限なきコロナ対策のバラマキ」によってねじ曲げられようとしているのだ。

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