コロナ禍で宗教法人に給付金はおかしくないか これだけの問題点

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持続化給付金までいただく

 小規模寺院からは、こんな声も聞こえてくる。

「身内や檀家で口裏合わせをすれば、法人が助成金を受け取れると税理士から言われています」

 同様の声は、取材した限りひとつやふたつではない。ちなみに国内約18万を数える宗教法人のうち、6割強が3人以下の規模(文化庁『平成26年度宗教法人等の運営に係る調査』)である。

 しかも1996年の宗教法人法の改正で、個々の宗教法人が所轄庁に役員名簿や財産目録の提出が義務づけられたが、「年収八千万円以下で、収益事業を行っていない」法人には、収支計算書や賃借対照表の提出義務が原則ない(作成していなければの条件あり)。国内約18万の宗教法人のほとんどは、このクラスにあてはまる。

「要するに、“隠れ商売”は可能ということなんです。財産にならない、現物の売買が伴わないフローのビジネスだったら、税務署や文化庁は掌握しようがありません。領収書がなくても構わないお金のやりとりでごまかせばいいわけです」

 と、宗教法人の売買を手がけるブローカーは言う。

「税務署から摘発されるのは、たとえば住職の私物購入、あるいは便宜供与が法人経費として計上されるケースです。逆に言えば、法律上、最低で3人の役員が必要ですから、責任役員1名(だいたいが、住職など聖職者が就く)の息のかかった2人の役員さえ用意すればいいわけです」(同前)

 実際、高齢の檀家をアルバイトで雇ったことにするなどのやり口で、架空の人件費を計上しているケースは、後を絶たない。

 宗教法人が受け取るのは雇用調整助成金だけではない。テレビ東京は、「持続化給付金は宗教法人にも」と報じた。こちらは一事業者あたり、マックス200万円の公金が支給される。

 ところが、この算定基準も大甘。「売上げが前年同月比で5割以上減少した月のある事業者」に200万円が支給されるというが、要はコロナ禍以降の帳簿を細工して、5割以下の数字をデッチあげればよいという脱法的やり口が可能なのだ。逆に完全に無収入の法人でも、「昨年の売り上げ」を修正申告しておけば、粉飾した数字をもとに給付金がもらえるのだ。

「何らかの行事で臨時収入があったことにすれば、法人としてまさに“臨時収入”がいただけるし、お寺のないフリーの僧侶も『個人事業主』としてマックス100万円の支給に預かれる可能性も」

 と、先のブローカー氏は語る。彼のもとには、雇用調整助成金や持続化給付金をだまし取るために、「休眠宗教法人」を買いたいという話が持ち込まれ始めたという。もっとも、これから休眠宗教法人を購入(実際は、法人役員の変更)するには、最低でも2000万円はかかるとされる。購入額のモトすらとれないことを説明すると、沙汰止みという結果になるんだとか。

 罰則はあるとしても、雇用調整助成金は厚生労働省、持続化給付金は経済産業省という所管違いもあるうえに、申請をチェックする側の圧倒的なマンパワー不足は、不正の温床になりかねない。それを分かっていながら、かつて創価学会を徹底攻撃した政権与党の自民党も、コロナ禍で「宗教を助けろ」に舵を切る。

 宗教法人側にも問題点はある。真宗大谷派やカソリック中央会議、生長の家など多くの宗教団体は、つい5年前まで「安保法制反対」で息巻いていたはずではないか。金をもらう話となるとだんまりを決め込むのか。

 もっとも、ここまで見てきたような不届き者ばかりの宗教界ではない。最後に、佐渡の日蓮宗寺院のある住職の言葉を紹介しよう。

「(給付金は)最初からあてにしてませんし興味もありません。我が宗門にも、困っている人はたくさんいるとは聞きますが、果たして貰えるものなら何でも、みたいな考えを起こす僧侶はどのくらいいるのでしょうか。鎌倉には疫病蔓延の折、世の中に向かった日蓮大聖人、今こそと思い、毎日合掌しています。我が宗門の管長がマスクして緋の衣を纏い、日蓮宗の新聞の一面に乗るありさまです。奇しくも今年は日蓮聖人の佐渡に配流された750年のご報恩の年、マスクなど着けず、来るなら来いと言わんばかりにお経をあげています」

週刊新潮WEB取材班

2020年6月1日掲載

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