安倍総理に経済を回復させられるのか コロナ不況で“失われた30年”の再来が…

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“通貨発行益”

 ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏によれば、今後、全国で非常事態宣言が解除されたとしても、

「経済が正常化するまでにはかなりの時間を要します。たとえば、航空需要が急減するなか、ANAが夏のボーナスを半減させると報じられました。大手ラーメンチェーンの幸楽苑も賞与の不支給を決めている。コロナ禍が長期化すれば、夏まで持ち堪えた企業も、冬の賞与が払えるかは予断を許しません。さらに、日本のサラリーマンは収入に占める残業代の割合が高いのですが、テレワークの普及で残業は削減傾向。3月の残業時間は前年より7・4%減少しています。当然ながら、収入が目減りすればレジャーや外食の機会も失われてしまう」

 政府の専門家会議が提言した〈新しい生活様式〉では、〈テレワークやローテーション勤務〉が推奨され、東京都が作成した「コロナ対策 東京かるた」には〈在宅の 勤務が普通 令和の時代〉という札まであるほど。

 要するに、国も都もサラリーマンの収入減など歯牙にもかけないワケだ。

 加えて、〈新しい生活様式〉には〈持ち帰りや出前、デリバリー〉を勧め、〈対面ではなく横並びに座ろう〉という記述も。

 これに首を傾げるのは第一生命経済研究所の首席エコノミスト・永濱利廣氏。

「売り上げ減に苦しむ飲食店が対面を避けるように客を入れると、稼働率はこれまでの2分の1になります。野球場やサッカースタジアム、劇場などに当てはめれば客席は2分の1どころか、3分の1以下の稼働率になってしまう」

 補償なしでは大家も賃料を2分の1、3分の1にはできまい。

 すでに非常事態宣言が解除された地域では、客の前後左右を空席にするため、4分の1の座席しか販売しない映画館もある。無論、完売でも売り上げは4分の1だ。

 永濱氏が続ける。

「〈新しい生活様式〉は、もう少し経済に配慮した見直しが必要になるでしょう。もし、このまま定着してしまうとバブル崩壊後の“失われた30年”が再来しかねません」

 そんな惨状を回避するためにはどうすべきか。

 シグマ・キャピタルのチーフエコノミスト、田代秀敏氏が言うには、

「窮地に立たされている中小・零細企業は現預金が少なく、上限50万円の家賃補助では全然足りません。そこで、事業規模に比例した枚数の有効期限付き100万円札を支給し、家賃や給料の支払いに充ててもらう。それ以前に、家賃を全額免除する政策を検討する必要もあります」

 そうなれば、家賃を受け取るテナントオーナーには固定資産税の減免措置が必要になるだろう。

「無利子の融資を募っても、返済期限があれば中小・零細企業は二の足を踏んでしまう。であれば、元本の返済期限がなく、利子のみを支払い続ける“永久劣後ローン”を導入すべき。国や自治体が金融機関に利子を補填し、融資先が破綻したらローンを買い取る。それくらいの対策でなければコロナ禍で中小企業を救えません」(同)

 経済アナリスト・森永卓郎氏の提案はこうだ。

「緊急経済対策を盛り込んだ日本の補正予算は約25兆円。アメリカの対策費は約300兆円なので10分の1に満たないわけです。本来であれば、感染が終息するまで“毎月10万円”を給付してもいい。そのための財源として発行した赤字国債は日銀に買い取らせる。政府は日銀に利息を払いますが、日銀の最終的な利益は国庫納付金として返ってくるので国の負担はゼロ。このやり方は“通貨発行益”と呼ばれ、第2次安倍政権下の7年間で、日銀は毎年平均53兆円も国債保有を増やしてきましたが、それでもインフレにはなっていません。一律10万円給付の予算は約12兆円なので、コロナの収束まで半年かかっても総額は72兆円。この通貨発行益で十分に賄えるはずです」

 経済の“非常事態”を脱するためには、思い切った施策が不可欠。

 いま「総理」に求められるのは、たとえ泥をかぶっても国民の生活を守るという覚悟に他ならない。

週刊新潮 2020年5月28日号掲載

特集「『コロナ』虚飾の王冠」より

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