「全国民にPCR検査を」は間違っている 「新型コロナ」最前線の医師が解説

国内 社会 2020年5月20日掲載

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PCR検査数は「日本の恥」なのか

 油断は禁物とはいえ、国内の新型コロナウイルス新規感染者数は減少傾向にある。一方でなぜかいまだに激化しているのは「PCR検査」を巡る論争だ。

 検査を増やせ、という立場では「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)が独走気味だったところに、最近新たに加わってきたのが島田眞路山梨大学長である。

 山梨大病院の元院長でもある島田氏は、産経新聞や東洋経済オンラインの取材に答えて、現在のPCR検査数は「日本の恥」という言葉まで使って、痛烈に批判をしている。

 島田氏の主張を要約すると、以下の通りである。

(1)日本のPCR検査数は諸外国と比べて少なすぎる。発展途上国並みだ。
(2)どんどん検査して陽性者はホテルや公共施設に収容して様子を見るべきだ。
(3)検査数を増やしても医療崩壊は起きない。
(4)検査数を増やさなかったのは、五輪などを考えたからだ。
(5)検査そのものは簡単なもので、もっと増やせる。

 ただ、そうはいっても実際に日本は「諸外国」よりも感染者数も死者数も少ない。検査数が多い国がうまくいっているとはいえないのでは、という疑問は残る。これについて、島田氏に直接問いただしたのが、杉村太蔵元代議士である。11日、「情報ライブ ミヤネ屋」(日本テレビ系)に出演した島田氏に対して、杉村氏は「検査数が少ないというご主張はわかるのですが、日本は圧倒的に死者数が少ない。それについてはどうお考えでしょうか」と質問をぶつけたのだ。

 しかし、これに対して島田氏は「世界と比べて圧倒的に検査数が少ない」という従来の主張を繰り返したうえで、「死者数が少ない」というデータ自体が信用できないと反論。要するに、日本がうまくいっているということ自体怪しい、それもPCR検査を増やさなければわからない、というのが島田氏の考えである。島田氏とは別に「全国民にPCR検査を」と呼びかけている人たちもいる。

現場の医師からの声

デイリー新潮」では、5月2日、実際に現場で新型コロナ対応をしている医師の声を紹介した(「最前線の医師」が語った本音)。都内の総合病院に務めるこの医師(以下、A医師)は、この取材で「現場の医師は誰もPCRを無闇に増やすことを望んでいない」と断言している。その主張の要点をまとめると、以下のようなものだ(なお、病院への問い合わせや抗議などが直接来ると、最前線での診察に支障が生じるのが懸念されるという理由で彼は匿名を望んでいる)。

「現場の医師が必要だと判断した患者に対してはPCR検査を行うべきだし、そのスピードや効率を上げることは必要だろう。

 しかし、ちょっと不安だとか、身の潔白を証明したいといった程度の人まで簡単に検査できるようなことは絶対にやらないほうがいい。

 不要な検査が増えることで、結果として必要な検査のスピードが遅くなる可能性が高い。実際に、保健所の電話がつながらない、というのはそのあらわれである。

 また、検査は100%ではない。偽陰性(本当は感染しているのに陰性となる)が必ず一定数出る。その人たちが、安心しきって自由に動き回るとかえって危ない。毎年のインフルの流行の原因も、この偽陰性の人が広めているという面がある。

 偽陽性の人もどこかに収容するとなると、その分のケアも大変だ。

 さらに検査そのものが感染を広げるリスクもある。感染症に不慣れな医師、クリニックに希望者がやってくると、そこでクラスターが発生する怖れがある。

 実際に検査数を無闇に増やした韓国やイタリアではクラスターが発生した。そもそも国によって事情が異なるので、外国のやり方をただ真似しても意味がない」

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