「古市憲寿」×東大生クイズプレーヤー「鈴木光」 巣ごもりで考えたい勉強とは何か

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勉強してない

鈴木 私の場合はコツコツ積み重ねていくことが好きで。テレビゲームも5年間同じものをやったり……。

古市 5年間も!?

鈴木 小学生の時に、親にプレイステーション2を買ってもらいました。ソフトはファイナルファンタジーXII。

古市 ファイナルファンタジーって基本は一本道のゲームじゃないですか。どうやって5年間も?

鈴木 やり込み要素がたくさんあるタイプのゲームだったんですね。1カ月に1度すごい密度でやる。だから、5年かかったのかもしれません……。

古市 他のゲーム欲しくならなかったんですか。

鈴木 ならないですね。

古市 一つの事を繰り返して極めたい人なのかな。

鈴木 単調なものが好きなのかもしれません。勉強もそう。外的要素に左右されることが少ないということに魅力を感じます。勉強って、学問の世界に浸って埋没していく作業。それが快感なんでしょうね。

古市 僕は本当に勉強ってしてないんです。SFCもAO入試でしたし、もともと慶應志望で、あまり受験勉強も必要なかった。

鈴木 勉強ってそんな「お勉強」でなくてもいい気がしています。つまるところ、「勉強してよかったことって何?」って訊かれた時に私が答えるとしたら、結局何かをしたいと思った時に切り口が増えることなのかな、と。今はインターネットがあって、知識を学ぶ必要性は低下していると思うんです。インターネットがない時代は知識を自分自身が持っているか否かで、情報処理の速度が圧倒的に違ってくるし、時間も手間もかかる。だから、知識として覚えておくことに価値があった。でも今は、何でもインターネットで調べることができますが、調べるのにもその検索ワードとかが分からなければ、そこにたどり着くことができない。

古市 僕は勉強より検索が上手。このテーマだったらこの人だな、この本だな、という勘所がある気がしています。検索を上手にするために逆に本を読む。本もその時に全部覚えようって読むのではなくて、後から検索できる材料を日々増やしているってイメージですね。必要な時に後から検索する。最新の情報は文字になっていないことも多いので、人との繋がりも大事にしています。

鈴木 だから、本を読むこと、外界に興味を持つこと、考え方が閉鎖的にならない姿勢は持った方がいい。広い意味での勉強、知識を身につける必要があるのには変わりないと思います。

古市 小説も勉強もダイエットも一緒。やればやる分だけ上手になり、伸びていく部分があるんでしょうね。

古市憲寿(ふるいち・のりとし)
1985年生まれ。社会学者。慶應義塾大学SFC研究所上席役員。若者の生態を描出した『絶望の国の幸福な若者たち』で注目され、メディアでも活躍。近著に『奈落』など。

鈴木光(すずき・ひかる)
1998年生まれ。東京大学法学部在学中。2017年にTBS系の人気クイズ番組「東大王」の予選を通過し、現在はレギュラー。「スタンフォード大学が認めた才媛」と称され、クイズプレーヤーとして活躍中。

週刊新潮 2020年5月7・14日号掲載

特別対談「誰の味方でもありません 拡大版『古市憲寿』× 現役東大生クイズプレーヤー「鈴木光』 巣ごもりで考えたい『勉強とは何か』」より

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