NYウォール街の投資銀行が予測 景気回復シナリオと投資対象から「避けられる銘柄」

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クオモ知事が口にした「BBB」

 たとえば、(1)の企業の持続可能性の情報開示には広範な情報が含まれ、エネルギー生産性、水生産性、廃棄物生産性、CEOと従業員の平均報酬の比率、年金の保護、取締役の女性の比率、離職率などといったものがあり、(4)の制裁とは、法的に罰金や操業停止命令を受けたことがあるかどうかを目安にする。

 こうした要素を数値化するのは難しそうだが、それにも規定ができている。CO2とはなんの関係もないサービス業、例えば、スターバックスの指標でみると、コーヒーカップの使用数を数値化する。紙コップはパルプでできているが、パルプは木材を伐採して製造される。木材の伐採によって、どれだけのCO2吸収量が抑制されているかを数値化する。水の再生にも同様の数値を当てはめて計算する、というもの。

 ESGの民間格付け機関もすでに存在する。アメリカで有名なところでは、株価指数の算出やポートフォリオ分析など、幅広い金融サービスを提供するMSCI、ブルームバーグなどがある。ESGを分析するためのアナリストの資格試験も存在し、すでに多くのアナリストが育っている。

 今後の世界経済は、利益追求だけを目的とした企業では立ちゆかず、これまで理想主義的だとされて普及してこなかった社会貢献型の企業が改めて見直され、広まっていく時代なのではないかと予想されているのである。

 最近、ニューヨーク州のクオモ知事が記者会見で、「BBB」(Build back better、より良いものに再建する)という言葉を口にした。コロナ感染で危機的状況に追い込まれた企業の間で、再建するなら以前と同じ構造ではなく、より良いものに作り変えようという取り組みが始まっている、というのである。それが「BBB」だ。地球環境にやさしいもの、人々の生活にやさしいもの、貧者におもいやりのあるものなどだ。

「ESG」も「BBB」も、ともに未来の企業基準の「ニューノーマル」となり、新しい常識観念になるものだろう。

譚璐美(たんろみ)
作家。東京生まれ、慶應義塾大学卒業。現在はアメリカ在住。元慶應義塾大学訪問教授。日米中三カ国の国際関係論、日中近代史をテーマに執筆中。著書に『ザッツ・ア・グッド・クエッション! 日米中・笑う経済最前線』(日本経済新聞社)、『帝都東京を中国革命で歩く』(白水社)、『日中百年の群像 革命いまだ成らず』、『戦争前夜 魯迅、蒋介石の愛した日本』(ともに新潮社)など多数。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年4月29日掲載

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