「コロナ退治でスクラム組もう」… 唐突に日本にすり寄る韓国人の底意

鈴置高史 半島を読む 国際 韓国・北朝鮮 2020年4月27日掲載

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韓銀総裁も首相も「日本とスワップを」

――ところで、金融危機と通貨危機はどう異なるのですか?

鈴置:学問的な定義はともかく、メディアではドル不足の状態を通貨危機と呼ぶことが多い。だから「通貨危機」は、金融システムが破壊される「金融危機」に必ずしもつながるわけではない。

 2008年の韓国がこれに当たります。米国からドルを借りて国内に供給し、そこで危機を食い止めた。

 半面、「金融危機」、つまり民間の金融機関が信用を失えば、海外からドルを調達できなくなって「通貨危機」も起こす可能性が極めて高い。1997年の韓国です。金融危機下では、企業に加え金融機関もどんどん破綻するので、経済全体がたちまち破壊されてしまう。

 チェ・ウンヨル議員はこの記事では日韓スワップには言及しませんでしたが、金融危機の恐ろしさをこんこんと説いたのです。

――韓銀総裁は日本とのスワップに前向きです。

鈴置:韓銀総裁だけではなく、経済副首相兼企画財政相も大いに乗り気です。専門家は皆、韓国経済が置かれた状況が分かっているからです(「新型肺炎発の韓国の通貨危機 米国の助けも不発で日本にスワップ要求…23年前のデジャブ」参照)。

 彼ら、経済の2トップに1週間遅れ、3月27日には丁世均(チョン・セギュン)首相も「これまで外国為替市場への貢献が大きかったので韓日通貨協定を締結するのが望ましい」と語りました。この人は経済専門家ではありませんが、専門家の意見をよく聞く人と言われています。

マスクとスワップの交換

――青瓦台(大統領府)には逡巡する気配もあります。

鈴置:4月2日に青瓦台関係者が「韓国を競争国と見なす日本はスワップに応じないだろう」と述べたと朝鮮日報が「もう1つの安全弁『韓日通貨スワップ』再開は不可」(4月2日、韓国語版)で報じました。「日本に頼んでも、どうせ断られる」との判断です。

――では、韓国はどうするのでしょう?

鈴置:「マスク作戦」を検討しているようです。マスク不足に苦しむ日本に送ってやると持ちかける。「無能」と批判されている最中だから、安倍晋三政権も「NO」とは言えない。その代わりに通貨スワップ締結を持ちだす。もし、マスクとスワップの交換に応じなければ「安倍がマスクを断ったぞ」とリークすると脅す――手口です。

 先に引用した「『共通の敵』に直面した韓日、争いやめて防疫協力を」でも、ソウル大学のチョ・グァンジャ教授が「韓国政府が先に韓日関係の転換のきっかけを用意することができる。日本にマスクを送るなど実質的な支援を見いださなければいけない」と語っています。

 韓国経済新聞の「自国民の帰還で互いに助け合う韓日、関係改善の機会にせよ」の「日本もコロナ感染者数が1万人に近づき、焦眉の急である(中略)。韓日通貨スワップの再開という我々の課題もある」という部分も「スワップ」と「何か」の交換を主張しています。

 中央日報など韓国紙は「韓国政府、米国・日本と韓国戦争参戦国にマスク支援を検討」(4月20日、日本語版)と報じました。日本は正式な参戦国ではないのに、マスク支援先リストに敢えて入れているのが怪しいのです。

「韓国式はすごいぞ!」

――でも、マスクだったら台湾から買う手もある。すでに台湾はマスクを日本に無償で送ってくれています。

鈴置:マスクの代わりにPCR検査キットを使う手があります。朝日新聞は4月25日、ソウル発で「韓国、PCRキットの提供検討 日本から『要請』が前提」と報じました。安倍政権も検査数を増やすと表明しているものの民間への委託が進まないこともあって、なかなか増えない。

 文在寅政権にすれば通貨スワップと交換できればよし。もし断られたら、日本国内の反・安倍勢力に「我々の命綱となる韓国の検査キットを拒否した」と批判させて安倍政権を揺さぶることができます。

――韓国の検査キットは「命綱」なのでしょうか。

鈴置:同じ4月25日、朝日新聞は「『世界標準』の韓国式コロナ検査 日本が採用しない理由」を載せました。「韓国式」のセールスが日本で始まったわけです。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集

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