「志村けんさん」「岡江久美子さん」は実名でも「コロナ死去」匿名報道のワケ

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遺族の気持ちを適正に

 もちろん、先述した通り、故人を静かに悼みたいのでそっとしておいてほしい、感染した事実を伏せたいといった理由から、実名公表を望まない遺族もいるはずだ。ただ、その一方で、「失った大切な家族がこの世に生きた証しをしっかり残したい」「実名とともにより具体的な事実を発信することでこの感染症の恐ろしさをしっかり世に伝えたい」――、そう考える遺族も少なからずいるのではないだろうか。

 まず今はコロナの感染拡大抑止のため、各自治体が奔走していることはよく分かる。ただ、亡くなった犠牲者の遺族の気持ちを適正にくみ取ることができているのか、遺族の意向次第では実名で公表すべきケースはないのか、よく考えて判断してほしい。

 無論、犠牲者や遺族のプライバシーは絶対に守らなければならず、自治体に加え、報じる際に実名か匿名かを判断する報道機関にも、最大限の配慮が求められる。実名が公表されれば、犠牲者の人となりなどを社会に伝えようと、各報道機関は遺族や周辺者に対する取材を試みるだろうが、犠牲者や遺族に寄り添う姿勢を忘れてはなるまい。

 各自治体は、遺族の意向を踏まえつつ、例えば、遺族のコメントを預かって代わりに遺族の思いを公表する、遺族の中でも取材対応する人を決めてもらってそれを報道機関に伝える、報道機関に代表取材を要請するなど、遺族の負担を減らすための工夫が必要となるだろう。

ライター・陽光満

週刊新潮WEB取材班編集

2020年4月27日掲載

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