コロナで行われる「命の選別」 医療崩壊が始まっている大病院の現実

国内 社会 週刊新潮 2020年4月23日号掲載

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「慶應病院」は手術不能!? 大学病院で何が起こっているか なぜ「東京女子医大」「順天堂」は感染者を受け入れないのか

 感染が拡大するにつれ、患者の受け皿となるべき医療現場からの悲鳴は大きくなるばかり。病床、医療機器、さらに医師までもが不足し、大学病院が積極的にコロナ患者を受け入れないという声も漏れ伝わってくる。日本でも「医療崩壊」の4文字が現実味を帯びるなか、「命の選別」という事態は回避できるのか。

 
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 首都圏の大病院に勤務する内科医が頭を抱えるには、

「街なかのドラッグストアと同じく、院内でもマスクがとにかく足りません。うちの病院でも、医師はマスク1枚で3日間しのぐような状況です。PCR検査で患者の喉や鼻腔から検体を採取するスワブ(綿棒)すら枯渇しつつある。現時点でも、軽症の方にまでPCR検査を実施する余裕はありません。病床にしても、コロナ患者を他の入院患者と相部屋にすることはできないため、病院にコロナ以外の患者を受け入れる余地がなくなってしまうわけです」

 コロナ対応に当たっている医師は、同時に、通常の外来患者や入院患者への対応も迫られる。しかも、

「臨時手当が出ることもなく、実質的にはタダ働き。家族への感染リスクを心配して、帰宅できない医師もいるほどです。症状の軽い外来患者が実は“陽性”だった、という例も珍しくないため、医師も職員も疑心暗鬼に陥っています」(同)

 コロナ蔓延で医療崩壊に至ったイタリアでは、1万6千人の医療従事者が感染し、医師100人超が命を落としたと報じられる。

 日本でも感染の恐怖に駆られた看護師の“コロナ退職”が起きているという。

 日本医科大特任教授の北村義浩氏によれば、

「小規模なクリニックや個人病院ではコロナの診断を受けつけず、玄関に“咳や発熱のある方は下記にご連絡ください”と自治体の相談窓口への案内を張り出していることも多い。待合室で高齢の患者にうつしたら大変なのは分かります。ただ結果的に、高血圧や糖尿病などの慢性疾患のある患者も、熱が出たら診察を受けられない状況なのです」

 となれば、コロナに怯える患者は大病院に足を運ぶしかない。だが、台東区で最大の病床数を誇る永寿総合病院では入院患者やスタッフら100人以上が感染。病院自体がクラスター(感染集団)化してしまった。

 さらに、この病院からの転院患者を受け入れた慶應義塾大学病院でも、

「当初、慶應病院はその患者が陽性だと知らされないまま手術を行っていた。当然ながら、患者の手術に関係した医師や看護師、研修医には濃厚接触が疑われます。彼らはICUにも出入りしていたため、現在は手術もままならない状態なのです」(慶應病院関係者)

 これに対し、慶應病院は、

「手術等の急ぎ治療が必要な患者さんへの対応と、既に予定されている手術は行っております。延期できる手術については、こちらからご連絡の上、延期をさせていただいております」

 と回答したが、

「急ぎでなければ手術も延期で、混乱はゴールデンウィーク明けまで続きそう。当面の間は新規の入院や、初診・救急の外来診療も停止しています」(先の関係者)

 北村氏が続ける。

「これは慶應病院だけに留まりません。院内感染が起きていない他の大病院でも、医師不足などが影響して“不要不急の手術”は5月以降に先送りされている。正常な医療態勢が阻害されているという意味では、すでに“医療崩壊”が始まっていると考えるべきでしょう」

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