50年来「同性カップル」の相続権を司法はどう裁いたか

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「男女の話だったら」

「パートナーが急死した後、妹さん側が事務所の廃業を進め、彼と住んでいた家の賃貸契約も解除されて、荷物もほとんど持っていかれた。スマートフォンに入っていた彼との写真まで、削除しろと言われました」

 そう憤る原告男性は、仕事が立ち行かなくなった上に、同性愛者であることで差別を受けたとして、相続と慰謝料700万円の損害賠償を求めていたのである。

 結論からいえば、大阪地裁は判決で原告男性の訴えを全て退けた。法的には、異性だろうと同性だろうと内縁関係において片方が亡くなっても、養子縁組などをしていない限り、原則として相手に相続権は認められない。

 原告男性は、財産分与を口頭で約束していたと主張したが、裁判所は遺言書もなく証拠がないと判断。被告も彼らを夫婦同然の関係と認識していなかったとして、不法行為と認めなかったのだ。

 改めて原告男性が言う。

「相続では黙って身を退くのがゲイの嗜みと言われることもあって、これまで泣き寝入りする人も多かった。みっともないオッサンだと罵(ののし)る声もあるが、これが男と女の話だったらとっくに結婚できていた、こんな問題も起きなかったと思うと、やりきれないのです」

 片や被告となった女性に話を聞くと、

「死人に口なしで、あちらさまが勝手なことを仰っているだけだと思います。あくまでも、兄の会社の従業員だと聞いておりますし、居候に過ぎませんから」

 と言うばかり。原告男性は控訴する意向で、遺されたファミリーが共に手を繋ぐ日はまだ訪れそうにない。

週刊新潮 2020年4月16日号掲載

ワイド特集「ファミリーの掟」より

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