韓国軍は“性転換”兵士をなぜクビにしたのか 本人は女性兵士として再入隊を希望

国際 韓国・北朝鮮 2020年2月11日掲載

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“実名顔出し”を決意した兵士

「私は小さい頃から、この国と国民を守る軍人になることが夢でした」

 記者会見で涙ながらにこう訴えたのは、韓国陸軍に所属していたピョン・ヒス元下士。”下士”は韓国軍の階級の1つで、下士官の最下位を指す。

 韓国陸軍は今年1月22日の審査委員会で、ピョン元下士を除隊とする決定を下した。理由は、ピョン元下士が男性から女性への性別適合(性転換)手術を受けたためだ。この決定を受けてピョン元下士は同日、実名を明かして記者会見を開催。軍服姿でカメラの前に立ち、服務を続けたいとの意思を強く訴えた。

 かつては、儒教に由来する厳格な性モラルで知られた韓国。また全ての男性に課される徴兵制度を通じて、軍隊式の男性社会的な価値観も根強く定着している。だが一方でこの数十年の急速な近代化、欧米化を経て、人々の意識も大きく変わってきた。ピョン元下士の切実な訴えに対し、韓国メディアもおおむね客観的または同情的なスタンスだ。

休暇を利用してタイで手術

 本人の会見及び現地報道によると、ピョン元下士は幼い頃から“ジェンダーディスフォリア(性別違和=性別に対する違和感)”を自覚し、抑えつけようと努めてきた。そのためあえて“男性的な”サバイバルゲームを趣味とし、竹島問題や北朝鮮問題など国防に関する活動にも参加したという。

 そうしたなかで母国に献身する軍人になりたいという愛国心が育まれ、下士官を目指す専門系の高校へ進学。下士官学校を経て2017年3月に入隊し、戦車操縦士として服務していた。2019年度初めには所属大隊の下士として唯一、戦車操縦で“A”の成績を受けている。

 ピョン元下士には男性兵士との寄宿舎生活も苦痛だったが、「国家に献身したい」との一念で乗り越えたという。だがうつ症状が次第に悪化し、2019年6月から国軍首都病院で心理カウンセリングとホルモン治療を開始。そして同年11月に休暇を利用してタイに渡り、性別適合手術を受けた。現役兵士がこの手術を受けるのは、韓国軍創設以来初めてだという。ピョン元下士は手術の翌月、戸籍に相当する“家族関係登録簿”に記載された性別の変更を裁判所に申請しており、現在その結果を待っている状態だ。

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