独裁へ突き進む文在寅 青瓦台の不正を捜査中の検事を“大虐殺”

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「とどめ」は1月13日に刺された

 さらに国会は、捜査指揮権を廃止して検察を弱体化する一方、警察の権限を強化する法案を通しました。与党の「共に民主党」は過半数を持ちませんが、選挙法改定で抱き込んだ小政党も賛成に回ったのです。

 保守の牙城だった検察から力を奪ったうえ「警察を左派の手先に使うのが目的」と韓国の法曹関係者は口をそろえます。リベラル派の弁護士も含めてです。

 検事や裁判官を含む政府高官を捜査する公捜処(高官不正捜査庁)の設置は昨年末に押し通しました。ただ公捜処は組織が小さく、実働部隊が手薄。そこで、保守派に睨みを効かせるのに足りない部分は警察力で補う作戦と考える韓国人が多い。

 また法案を通す過程で、国会議員は公捜処の捜査対象から外すことになりましたが、力を強めた警察を手足に使えば、立法府も牽制できることになります。

 中央日報の「青瓦台・政府・与党総動員、韓国検察の手足が縛られた」(1月14日、日本語版)は「1月13日を境に検察は変わった。手足が縛られたのだ」と書きました。検察は――韓国の三権分立は1月13日にとどめを刺されたのです。

保守大合同で活路を図るが……

――今後、文在寅政権はやりたい放題ですね。

鈴置:公捜処が動きだすのは7月。保守は4月15日の国会議員選挙で過半数をとって、公捜処設置法を廃止に追い込むつもりです。

 ただ、朴槿恵(パク・クネ)大統領の罷免騒動の際、弾劾に賛成するか否かで保守党は2つに割れました。韓国は基本的に小選挙区制ですから、分裂したままなら勝てる可能性は低い。

 300議席中、47議席を比例投票で選びますが、昨年12月27日の選挙法改編で小政党に優先的に配分する仕組みになった。最大の保守政党、自由韓国党は比例では1議席も取れないとの予測もあります。そこで保守側は中道保守政党も含めた大合同を模索し始めました。

――保守が4月の総選挙で負けたら?

鈴置:左派政権のやりたい放題になります。司法府を我がものとし、立法府も脅せるようになるのですから。

左も右も民主主義を壊す

――次の大統領選挙で保守が勝てば、韓国に三権分立が戻るのでしょうか。

鈴置:そう訊くと首を横に振る韓国人がほとんどです。まず、保守派は「そもそも、このまま行けば我々は大統領選挙で勝てない。左派政権が警察を使って選挙に介入して来るからだ」と説明します。

 確かに、今回の検察人事で捜査を妨害された蔚山市長事件。青瓦台が警察を使って対立候補を陥れ、文在寅大統領の支持者を当選させた、との疑いが持たれています。

 一地方都市の首長選挙でも介入したのですから、大統領選挙ともなれば、警察あげての大規模な妨害工作が起きて不思議ではありません。

 一方、普通の人は「保守が次の政権を取っても、もう、元には戻らない」と言います。司法も立法もコントロールできる――。政権にとってこれ以上に都合のいい話はない。保守の側だっていったん政権を取れば、こんな便利な武器は握って放さない、というわけです。

――結局、誰が政権に就こうが韓国の民主主義は壊れていく……。

鈴置:そういうことです。もう一度言います。韓国人は党争――仲間内の争いに陥ると、周りが見えなくなってしまう。そうやって自ら国を滅ぼしてきたのです。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年1月21日掲載

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