菅官房長官がぶち上げた「世界レベルのホテルを50カ所新設」構想の皮算用

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 政府は2020年に訪日外国人旅行者4千万人という目標を掲げている。それに向けてエンジンをふかそうというわけなのか。

「世界レベルのホテルを各地に50カ所ほど新設する」

 菅義偉官房長官が、そう明らかにしたのは昨年12月7日のこと。海外の富裕層を日本に呼び込むにはスイートルームを多く持つホテルが必要だが、まだ足りないのだという。それならば、と財政投融資(つまり国債発行)と日本政策投資銀行の資金を使って建てるというのだから、大盤振る舞いである。

 ホテル評論家の瀧澤信秋氏が言う。

「菅長官の言う“世界レベルのホテル”とは、ザ・リッツ・カールトンやザ・ペニンシュラといったクラスを指していると思います。たしかに、ここ数年、インバウンド効果でホテルが続々と開業していますが、多くは一般旅行客向け。いっぽうで、VIPがやって来る『MICE(国際会議や国際イベントなどの総称)』になると、受け入れができる都市が限られるのが実情です。東京と大阪以外は五つ星ホテルが少ないためです」

 実際、国際会議が開かれた回数(18年)で見ると日本は世界7位。しかし、都市で比較した場合、トップ10に日本の都市はひとつも入っていない。MICEの誘致は観光庁の悲願でもある。冒頭の「菅発言」の背景には、世界中の金持ちをごっそり呼び寄せる皮算用があるというのだ。

「菅さんは自分がインバウンド政策を成功させたという自信があります。実際、元投資銀行マンのデービッド・アトキンソン氏らをブレーンにして東京・赤坂の迎賓館を一般公開するなど様々な手を打ってきた。財投や日本政策投資銀行の資金を使うにあたっては、麻生太郎財務大臣とのすり合わせが必要ですが、目標達成のためには手段を選んでいられないというわけです」(政治部デスク)

 が、花火を打ち上げても事がうまく運ぶとは限らない。

「京都市では、ここ5年でホテルの部屋数が約7千室増え、大阪は2万2千室増加しています。そのため、部屋が余り気味になってきているのです」(ホテル関係者)

 そもそもホテルは需給バランスを見て民間が建てるもの。政府が主導してどうするのか。

 そういえば鬼怒川温泉に行くと、廃業したホテルが立ち並ぶ一角がある。バブル期に客が増えると見込んで建てたものが大半だ。税金を突っ込んで「ゴーストタウン」を作ってしまった、なんてことにならなければいいが……。

週刊新潮 2019年12月26日号掲載

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