「カジノで観光客が集まるなんて幻想」――観光カリスマが語る

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 7月20日にいわゆるIR法案(カジノを中心とする統合型リゾート施設の設備推進を目指す法案)成立した。別名「カジノ法案」とも呼ばれる同法が通ったことで、今後は日本でも本格的なカジノの開設が目指されることになる。

 同法の背景には、カジノ施設の開設でインバウンド(訪日外国人)を取り込もうという一部政界・財界の期待があるのは周知の通りである。しかし、カジノが本当に経済の起爆剤になりうるのだろうか。

 実際、観光の専門家の中には、「カジノは経済の起爆剤にならない」と懐疑的な声が根強いのだ。地域振興の現場で奮闘する二人の専門家が「ぶっちゃけ」で語り合って話題を呼んでいる『観光立国の正体』では、シンガポール在住経験も持つ藻谷浩介氏と、スイス在住で各国の観光事情に詳しい観光カリスマの山田圭一郎氏が、次のように語っている(以下、引用)。

発想が「リゾート法」と一緒

藻谷:国内と海外の認識の差ってことでついでに言うと、カジノはどう思う?

山田:正直、「何を今さら」という感がぬぐえないです。カジノを作ったところでうまくいっているところなんてほとんどないですよ。カジノだけでなく、IR(Integrated Resort:統合型リゾート)そのものをちゃんと理解してない人が多いです。

藻谷:IRとしてうまくいっているのは、シンガポールのマリーナベイサンズと、ラスベガスやマカオの一部くらい。圧倒的多数はうまくいっていない。

山田:IRでうまくいっているところも、カジノだけで儲けているわけではないですからね。最近、マカオはエコツーリズムも推進しています。ポルトガル統治時代の歴史的建造物もかろうじて残っているので生活文化を活かそうとしている。

藻谷:マリーナベイサンズも、日本人はあの奇天烈なビルの上にあるプールに入って喜んでいるだけ。カジノに行っている人はほとんどいない。ラスベガスでも日本人客のほとんどはショーや食事を楽しむのが主目的です。対して中国人は賭け事が大好きですが、七割が華人のシンガポールでは国民は高い入場料を払わねばカジノには入れない。ギャンブル中毒者の増加を防ぐためです。ですからマリーナベイサンズの場合、中国本土からのお客が頼りです。ここが賑わっていた理由のひとつに中国共産党の腐敗官僚たちのマネーロンダリング機能を担っていたこともあるらしい。それも習近平の反腐敗闘争で相当減ったとか。

山田:アメリカのカジノだって、ラスベガスの一部を除けばうまくいってない。アトランティックシティなんて落日の観光リゾート地です。韓国にもカジノが各地にあるけどそれで韓国経済が潤っているという話は聞いたことがない。

藻谷:僕はカジノの話を聞くたびに、ディズニーランドを見てきた人が「ウチの町にも遊園地作る!」とダダをこねているようなものだと感じます。ラスベガスやマリーナベイサンズとカジノ一般は、ディズニーランドと普通の遊園地以上に違います。逆に言えば、「カジノで地域活性化」と唱える人は、これに限らず顧客目線でビジネスを考える能力がない。何をやっても客商売では失敗するタイプですね。

 そもそも、東京も京都も大阪も、カジノのコンセプトと元々の資源がマッチしない。ニューヨークやパリやローマだって、沖縄やハワイだって同じでしょう。

山田:推進派の話を聞いていると、昔のリゾート法の頃のような意識がまだ残っている。開発収入で利益を得たいとか、それで恩恵を被りたいみたいな話ばかり。どこかの国立競技場と同じですね。

藻谷:これもプロダクトアウト(注・顧客の望むものではなく自分が作ったものを売る)の発想の典型です。リゾート法の頃、「高層ホテルとゴルフ場を作れば客が来る」と思い込んで、ダメな設備を大量に作ったのと一緒。

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 アメリカのトランプ次期大統領はアトランティックシティーで大規模カジノを三つも運営していたが、開設直後からさんざん運営に苦しんだあげく、いずれも手放した。トランプ氏が運営から手を引いた後も彼の名を冠していた「トランプ・タージマハル」も、今年になって施設の閉鎖が決まっている。日本がこれから作ることになる施設が、トランプ氏の作った施設の轍を踏まないと言えるだろうか。

デイリー新潮編集部

2018年08月21日掲載

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