2019年「セブン、ファミマ、ローソン」の明暗、2020年に待ち受けるコンビニ「2つの課題」

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2020年 コンビニの課題

 ではこれらを踏まえたうえで、渡辺氏に2020年のコンビニの“課題”を語っていただこう。ポイントは2つある。

「ひとつは、そろそろ各社『男性向け』の商品開発に力を入れるべきではないか、という点ですね。ローソンの『バスチー』の成功は喜ばしいところですが、スイーツしかり、ここ数年のコンビニは女性をターゲットの中心に据えた開発に力を注いできました。男性客が約7割を占めるとされていたコンビニが変わったのは、11年の東日本大震災がきっかけでした。関東圏は小売店が品薄になったことで、女性客や高齢者層はコンビニの食品や日用品を手に取ることになった。そこで初めて、コンビニの商品の良さを認識したと言われています」

 以降、各社ともに女性客の割合は増えていった。ローソンは14年度のレポートで女性客が全体の約45%を占めるとし、セブンも17年2月期の時点で、女性の割合が47・4%と公表している。ファミマも、客の男女比を5:5にしたい考えだという(流通ニュース19年5月10日配信記事より)。

「コンビニ業界全体で目を向けてみると、売上高は一貫して伸びてきていて、08年からの11年間で7・86兆円から10・96兆円に成長しています。ところが、1店舗あたりの売上高(日販)は、12年の55・40万円をピークに微減微増を繰り返し、18年は54・31万円に減っているのです。いずれも経済産業省が発表した数字です。これは、もちろんコンビニの店舗数が増えすぎ、競合が激しくなっていることが最大の原因ですが、女性客を取り込んでも、それほど個々の店が儲かっていない、という側面も無視できません。これを打破するにはどうすればいいのか。人口の約半分が男性ですから、ここで男性客を取り戻す試みを行うことが、現実的な対応だと思うのです。具体的には、小洒落たスイーツやパスタだけでなく、シンプルなシュークリームやエクレア、ミートソースやナポリタン、に力を入れるわけです。個人的には、ファミマやローソンは女性顧客目線が多い印象をもっていますが、並行して男性顧客目線のマーチャンダイジングも重要です」

 男女といわず、若者を取り入れればいいのではという気もするが、「2019年の出生率は90万人割れ。少子化が進む状況で、若年層はターゲットにしにくい」と渡辺氏は見る。その流れでいえば、2つ目のポイントとなるのが店舗の「ワンオペ化」だという。

「いま、外国人労働者が積極的に入ってきていますよね。先に述べた通り、私も基本的には大歓迎です。が、今後も外国人は働きに来てくれるのでしょうか。日本の経済力が落ちれば、働き手は中国や経済発展著しい東南アジアに流れて行ってしまいます。加えて、働き方改革が叫ばれるように、従来の無理な働き方も難しい。そして、若年層もいない。となれば、真っ先に取り組まなければならないのは、店の省力化でしょう。ずばり2020年は、各社のセルフレジ競争の年になります」

 今も時折コンビニの店頭に立つ渡辺氏の体感では“きちんと接客してほしい”客は、1000人中の500人。約半数は、とくにコンビニに接客を求めていないという。先述のタバコ注文のほかにも、公共料金の収納代行や弁当の温め、Amazonやメルカリの受付……と、ひとりの客の対応に2-3分を要するサービスも少なくない。これらの省力にむけた“進化”も、次の知恵の絞り所だろう。

「イメージはガソリンスタンドですね。機械でできることは機械に任せ、人力が必要なところは人力でやる。セルフレジがうまく機能すれば、店頭に立つ人間は一人いれば足りる。だからコンビニは『ワンオペ』になるべきです。もっとも、万引きの対策は必須ですけれど……」

 2020年もコンビニにはお世話になります!

週刊新潮WEB取材班

2019年12月27日掲載

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