伊藤詩織さん訴訟 裁判所にバッサリ切り捨てられた「山口敬之」記者の供述を検証

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 さる12月18日、伊藤詩織さんが山口敬之・元TBSワシントン支局長を相手に損害賠償を求めていた民事訴訟の判決が東京地裁であった。結果は「被告は、原告に対し、330万円の金員を支払え」というもの。伊藤さんの勝訴である。注目すべきは判決文で、その内容は山口記者の主張をことごとく否定するものだった。本件は刑事事件で不起訴、検察審査会でも不起訴相当だったのを踏まえれば画期的と言える判決であり、BBCなど世界の主要メディアも速報した。以下、裁判資料等から、覆された山口氏の証言を“検証”してみたい。

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 詩織さんは山口記者と恵比寿で飲食を共にした際、2軒目の鮨屋で酩酊状態になっている。詩織さんはドラッグを盛られた旨を主張しているわけだが、山口記者は、前後不覚に陥った詩織さんをタクシーに乗せた点について、「彼女が神奈川県内に居住していたと思っていた」と主張。しかし、判決では、詩織さんがあらかじめ原宿在住であることを告げていたとしたうえで、「帰宅のため原告をタクシーに同乗させた山口記者が、詩織さんの帰宅先を尋ねていないのは不自然」と指摘している。

 さらに、彼が「午前0時までに米国の政治の動向を確認する必要があったため、やむを得ず彼女をホテルへ連れて行った」と供述している点について、判決は「当時、山口記者はTBSから“出社に及ばず”と通知されているのだから、動向チェックは職務上必須とは認め難い」と喝破したのだった。“俺は支局長で超多忙なんだ”とでも言いたげな態度に、相当の理由が全くなかったということになる。もちろん超多忙だからといって、同じ部屋に連れ込む理由にはならないのだが……。

 また山口記者は、暴行後に詩織さんから就労ビザに関するメールが送られてきたことをもって「本件行為があったことを受け入れた上で就職活動に係る協力を求める行為であり、本件行為が原告の同意に基づくものがあったことを裏付ける」と主張している。これについても判決では、「同意のない性交渉をされた者が、その事実をにわかに受け入れられず、それ以前の日常生活と変わらない振る舞いをすることは十分にあり得る」「メールも、被告と性交渉を行ったという事実を受け入れられず、従前の就職活動に係るやり取りの延長として送られたものとみて不自然ではない」とバッサリ切っているのだ。

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