ヤフーからTポイント1億円盗んだ「ごく普通の母子」の「アナログ手口」

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元自衛隊

 これらを繰り返して1億円近いTポイントを盗んだようだが、ITジャーナリストの井上トシユキ氏は、

「この、同一人物が別人物になりすますやり方は、ネット上の掲示板にも書き込まれていましてね。実行するかどうかは別にして、ネットでは、知らない人は“情弱”(情報弱者の意)と揶揄されます」

 同じくITジャーナリストの三上洋氏の指摘。

「今回と同じようなポイントやIDの不正は、『じゃらん』や『メルカリ』でも行われ、事件化しました。しかし、ヤフーとしても、さすがに7万個以上ものIDを不正取得されるなどとは想定していなかったのでは」

 その点をヤフーの広報担当者に訊ねると、

「利用規約上、1人の人物が複数個のアカウントを取得することを規制していませんでした。現在では、SMS認証などを通じた本人確認を行っています」

 というから、表面化していないだけで、ほかにも同種の犯罪が行われている可能性はあるとみていいのではないか。プログラムを使ったとはいえ、数打ちゃ当たる、“アナログ的”な手法を実行した母子。札幌の自宅周辺からは、悪評などはまったく聞かれない。近隣住人に訊いても、

「お父さんはサラリーマンで、お母さんは専業主婦。息子さんは、自衛隊に入ったと聞いてたけど、戻っていたとは知らなかったな」

 自宅は一軒家だが、特に派手さもなく、住宅街に溶け込んでいた。

 IT全盛の時代にあって、そんな、ごくふつうの家に暮らす母子が単純な手法で巨大ITのセキュリティの脆弱さを突いたのである。

週刊新潮 2019年12月12日号掲載

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