ついに「中韓同盟」を唱え始めた文在寅政権 トランプ大統領は「韓国は北朝鮮側の国」と分類

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米国を聴衆に中韓が合唱

――かっとなっての発言でしょうか?

鈴置:思い付きの発言とは思えません。「中韓同盟」という話題を振られた中国の専門家は清華大学・現代国際関係研究所の閻学通(Yan Xue-tong)院長です。

 この人こそは、「米国とだけでなく、中国とも同盟を結べ」と韓国に要求してきた人なのです。もちろん、個人の発想ではありません。米韓同盟を弱体化する、可能なら同盟を消滅させるのが中国共産党の目標です。

 2014年4月24日、閻学通院長は朝鮮日報の記者に「10年後の世界は中・米の2極構造となる。韓国が米韓同盟だけを維持しては不利になる。中国とも同盟関係を確立することが中韓両国の利益だ」と語っています。

 同紙の「10年後の世界は米・中2極構造…韓国は中国とも同盟結ぶのが有利」(2014年4月25日、韓国語版)が報じました。

 今回も、閻学通院長は文正仁特別補佐官の問いに対し「そうですね。この地域の地政学的状況をそのように造成するのはとても新しい考え方です」と答えています。

「中韓同盟の提案」に、すかさず「やぶさかではない」と声を合わせたわけです。そもそもこのセミナーが企画されたのも、中韓合唱を米国の専門家に聞かせるのが目的だったのかもしれません。

 前出JTBCの「〈ファクト・チェック〉文正仁・特別補佐官、中国に『核の傘』を要請したのか?」で閻学通院長の発言を読めます。

VOAで反撃した米政府

――米国は「中韓合唱」に反撃しましたか?

鈴置:米政府はノーコメントを通しています。下手に反応すると「中韓の挑発に慌てふためいた」と受け止められかねないからでしょう。ただ、メディアを通じて牽制に乗り出しました。

 先ほど引用した、VOAの「波紋呼んだ『中国の核の傘』の質問…『北朝鮮と中国の挟撃招く危険な概念』」(12月7日、韓国語と英語)がそれです。

 VOAとしては異様に長い記事で、米国の専門家を総動員し「中韓同盟」がいかにばかばかしい発想かを執拗に強調しています。

 記事の見出しとなった「中朝による挟撃」を語ったのは米・民主主義守護財団のマクスウェル(David Maxwell)上級研究員。発言は以下です。

・If there are no US troops there and there's no more alliance with the United States, China and North Korea form what is like a pincer movement, you know, one from the north and one from the west and, they really could dominate.
・If US forces leave the peninsula and China gives a security guarantee, what I expect to happen is China will support North Korea's subversive efforts and to try to undermine South Korea, and really to make the South Korean government collapse.

「米軍が撤収し米韓同盟がなくなれば、中朝両軍が韓国を挟み撃ちにして北と西から攻撃する」、「中国が韓国の安全保障に責任を持つようになれば、中国は北朝鮮を助けて韓国を壊滅する。韓国政府も崩壊する」と、脅しあげたのです。

――本当に「中朝が韓国を挟撃」するのでしょうか?

鈴置:普通の韓国人はそうは思いません。韓国が米国から離れ、中国の懐に転がりこめば中国は大喜びする。中国は北朝鮮以上に韓国を大事にするから、北が南を威嚇しようものなら叱ってくれる――と考える人がほとんどでしょう。

新参者の韓国は大事にされない?

――米国人と韓国人の認識の差は大きい……。

鈴置:米国人は「ともに共産圏に属する中朝の絆は深い。中国と同盟関係を結んでも、新参の韓国は仲間外れにされる」と予想するようです。

 VOAのこの記事も、国防総省のコーブ(Lawrence Korb)元次官補の「もし朝鮮半島で何か起きたとして、中国人が共産国家の北朝鮮に核兵器を使うだろうか?」との発言を紹介しています。

 さらに、ブルッキングス研究所のオハンロン(Michael O’Hanlon)上級研究員の「核の傘は『モノ』ではない。相互の責任と密接な外交関係を長年、積み重ねて生まれる義務なのだ」との談話も引用しています。

 こうした意見を読むと、米韓の世界観の違いに驚かざるを得ません。

 中朝は共産主義というイデオロギーによって団結しているのではありません。米国と対立してきた北朝鮮にとって、中国は強力な後ろ盾です。中国にとって、北朝鮮は米国に対する防波堤です。地政学的に相互を必要としているに過ぎません。

 そこに、中国をにらむ米軍基地が置かれていた韓国が中国側に寝返って来るのです。そんな「可愛い」韓国を核で脅す北朝鮮に、中国が甘い顔をするとは考えにくい。

 確かに、中朝の軍事同盟は1961年に結ばれ、60年近くの歴史を持ちます。ただ、決して両国は良好な関係にありません。川ひとつで隣り合い、しばしば干渉して来る中国に、北朝鮮は警戒を緩めません。

 中国も「言うことを聞かない北朝鮮」に頭を痛めています。一方、韓国は米国と同盟を結ぶ今でさえ、中国の命令を実によく聞きます。だから韓国人は「同盟さえ結べば中国は、北朝鮮よりも大事にしてくれる」と信じているのです。

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