川井梨紗子が郷里のレスリング会長に異例の苦言 彼女の両親が語る“ドンとの確執”

スポーツ 2019年12月2日掲載

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 女子レスリング57キロ級で世界選手権三連覇、東京五輪の代表が決定している川井梨紗子(25 ジャパンビバレッジ)が、故郷石川県のレスリング協会の下池新悟会長(72)について、「女性蔑視発言があった」「協会を私物化している」などと批判した。五輪4連覇の伊調馨(35 ALSOK)との大激戦を制し、吉田沙保里を引き継ぐスーパーアスリートの川井がこのようなことを言うのは異例で、相当に募っていた思いだったようだ。

 発言はいずれも11月27日に石川県庁での県スポーツ特別賞の贈呈式後、記者団に囲まれた際のもの。川井は、下池氏が11月に県内で行われた高校選抜選手権大会の挨拶のことを家族から聞き、「『石川県には五輪内定者が2人いる。しかし残念ながら女だ』という発言があったと聞いた。悲しかったし、五輪出場が祝福されていないのかと思った」と話した。「2人」とは、もちろん、9月の世界選手権(カザフスタン)で姉妹揃って東京五輪代表を決めた梨紗子本人と63キロ級の友香子(22 至學館大学)のことだ。さらに「リオの時から親に(が)嫌がらせをされていました。壮行会を開いてくれなかったり、親に募金箱を持たせて集金させたり、なんかで耐えられなかったですね。東京五輪だし、地元の方が喜んでくださると思って、頑張っているという中でそういうことがあって、一緒に盛り上げてくれるといいなと、ずっと我慢していました」と打ち明けた。

 谷本正憲県知事とも記念撮影し、めでたい授賞式の場なのにこれだけ強いことを言ったのも、両親は会長に言えないと考えてのこと。スケートの織田信成元関西大学監督のような「情けない涙」こそ見せなかったが、思いつめた末のことだったのがうかがえる。

 一方、女性蔑視発言について下池氏はTBSの取材に「そんなのひとつも言うとらんよ。聞いてみい。みんなに」と言い、「女性だから駄目だとか言うわけない。大会に参加した選手を激励しただけ」と発言を否定した。さらに「女であろうと男であろうと石川県から選ばれたということは大変名誉なこと」とした。こうなると「言った、言わない」の様相だが、この時の大会には県レスリング協会の常務を務める高校教師で川井梨紗子の父親である川井孝人さんもいた。本人に聞くと「はっきりと聞きました。会場の人はみんな聞いていたと思いますよ」と話した。

「嫌がらせ」について孝人さんは「会長のお膝元の志賀町での大会では妻は出入り禁止にされている。妻の教室から全日本ジュニアに3人出ていたが1人しか国体に選ばれなかった。妻は割と声が大きい女なので、試合の判定に不服があったりすると大きな声を出したりしていたことも癪に障ったのでしょうか」と話した。

 川井姉妹はレスリングのサラブレッドだ。父の孝人さんは学生時代にグレコローマンで二冠に輝いている。母の初江さんは全日本選手権を二度制し、1989年の世界選手権に日本代表で出場し入賞した。引退後は金沢ジュニアレスリングクラブでジュニア選手を指導している。

 壮行会について下池氏はテレビで「何言うとるんや。壮行会はやった。金を出した。あの金はなんだったのか」などと言っていたが、「あの金」とは孝人さんが持っていた募金箱に自ら入れた1万円のことのようだ。「親が集めるのが一番いいからお前が集めろと(孝人氏に)言った』などと話している。テレビインタビューでこんな言い方ができるのだから、孝人さんは下池氏にとって顎でこき使う部下だったのだろう。

 初江さんは、筆者の取材に「壮行会については、毎年、年度末に県協会の総会があり、その後に懇親会もするのですが、(リオの直前の)2016年の3月に行われた時、主人に『オリンピックに娘が出る、って言ってやるから募金を集めろ』と言っていたようです。父が募金集めをさせられている姿を見て娘は壮行会には思えなかったのでしょう。受け止め方が会長とは食い違っているようですね」と話した。

 初江さんは「会長は直接私に言うことはなく、いつも夫に言ってます。主人に『出入り禁止だって言ってるよ』と言われました。それでも、金沢市にいる会長の友人と一緒に駆けつけたりはしていたという。

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