GSOMIA維持も、米国は「韓国は今後も中国に接近」と予測 もう収まらない怒り

鈴置高史 半島を読む 国際 韓国・北朝鮮 2019年11月26日掲載

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 米国の圧力を受け、韓国は失効寸前になって日韓GSOMIAの維持を決めた。だが、米韓同盟の存亡の危機は深まるばかりだ。「どうせ韓国は中国側に行く国だ」との認識が米国で広がったからだ。韓国観察者の鈴置高史氏が展開を読む。

米韓同盟を人質にした韓国

鈴置: 極めて興味深い記事がワシントン・ポスト(WP)に載りました。「The 66-year alliance between the U.S. and South Korea is in deep trouble」(11月23日)で、「韓国は日韓GSOMIAを維持したが、米韓同盟は揺れ続ける」と分析したのです。

 アーミテージ(Richard Armitage)元米国務副長官と、元米NSCアジア部長のチャ(Victor Cha)ジョージタウン大学教授の共同論文です。2人とも米国を代表するアジア安保の専門家です。

 この論文は、米日韓のインテリジェンス共有体制を終了するとの決定を文在寅(ムン・ジェイン)政権が延期したのは賢明だった、と一応は評価しました。

 ただ、ポイントはそこにはありませんでした。「GSOMIA破棄」という韓国の行動が、米韓同盟を毀損したと厳しく非難したのです。引用します。

・これまで培ってきた信頼関係はすでに大きく傷ついた。韓国政府は価値ある協定を露骨に人質にして、米政府に――米国の太平洋における主要な民主国家の同盟国である――韓日間の経済的、歴史的な問題に介入させようとした。これは同盟を乱用する行為だ(damage to the reservoir of trust in the relationship had already been done. Seoul’s apparent leveraging of the valued agreement to compel Washington’s involvement in economic and historical disputes between South Korea and Japan — the United States’ two major democratic allies in the Pacific — was an act of alliance abuse.)。
・インテリジェンス協力をやめるとの脅しは、北朝鮮の核・ミサイル試験に対する3国の対応能力を落とすにとどまらない。韓国の安保上の利益が日米のそれとは潜在的に隔たっていることを示した。(米韓)同盟弱体化の明白な証しである(The threat to end the intelligence cooperation not only degrades the ability of the three to respond to North Korean nuclear or missile tests but also represents a potential decoupling of South Korea’s security interests from those of Japan and the United States, in a significant sign of alliance erosion.)。

中韓軍事協力は米国への当てつけ

――日韓GSOMIAの維持をいまさら表明してももう遅い、との指摘ですね。

鈴置: その通りです。8月のGSOMIAの破棄宣言は偶発的なものではない。韓国の「離米従中」の一環だ――との認識が背景にあります。この論文は米韓同盟の破綻を象徴する、4つの具体例をあげています。

(1)「ファーウェイ(華為技術)の設備を5Gの通信網に使うな」との米政府の同盟国への要求は、韓国の携帯電話会社を困惑させている。
(2)中国の提案した多国間の貿易協定(ここには米国は含まれない)に韓国は未だに参加を希望している。
(3)中国のアジアにおける航行の自由への挑戦を牽制するための米主導の「インド・太平洋戦略」を韓国は支持しない。
(4)今週、韓中の国防相は防衛交流を強化し軍事情報のホットラインを設立するための協定に署名した。

(2)の中国の提案した多国間の貿易協定とはRCEP(東アジア地域包括的経済連携)のことでしょう。

 インドが参加を渋っているため、日本政府は中国がRCEPを牛耳るのを懸念し「インドが加盟しない以上、設立は合意されていない」との認識を打ち出しています。一方、中国に従順な韓国政府は「合意はなされた」と発表しています。

(4)の中韓軍事協力協定は11月17日、両国の国防相がバンコクで会談し「海・空軍の直通電話の改善などで合意した」と発表したことを指します。

日本にはGSOMIA拒否、中国には軍事協定を求愛」(10月21日、韓国語)と書いた韓国日報を除き、韓国メディアは中韓の軍事接近をさほど大きく扱いませんでした。そのせいか日本でも、ほとんど報じられていません

 なお、英字紙の世界では英テレグラフが「China signs defence agreement with South Korea as US angers Seoul with demand for $5bn troop payment」(11月18日)で報じています。

 韓国日報の英語版を参考にしたようで、米韓が在韓米軍の駐留経費問題でもめ始めた今、韓国が中国に接近している、との視点で書いています。

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