沖縄で深刻化する深夜の「路上寝」問題 酩酊するまで飲んでしまう文化も一因か

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多いアルコール依存者

 表の右側をご覧いただくと、単純な「販売・消費量」では、東京、大阪、神奈川がベスト3を占める。このように、ベスト10に人口の多い都道府県以外は存在しない。

 ところが左側の「1人あたり」になると、人口との比例が失われる。高知、秋田、青森、宮崎、新潟、岩手という、酒好きで知られる県がベスト10に名を連ねている。

 2つの表で東京が首位を占めるのは、関東近郊の通勤客や全世界から訪れる観光客や出張客などが、アルコールを呑むからだ。住民票を都内に置く成人が飲んでいる量だけではない。

 つまり“かさ上げ”された数字というわけだが、観光客の多い沖縄も同じ傾向は存在する。しかしながら、沖縄の飲酒状況を見ると、やはりアルコールの消費量が多い県民が少なくないと言えるようだ。沖縄県の調査結果から、一部をご紹介しよう。

◇飲酒頻度は全国平均より少ないが、男女共に飲酒者の割合は高い。さらに「一度に大量の酒を飲む」傾向が認められる。

◇肝疾患による年齢調整死亡率は男女共にワースト1位。アルコール性肝疾患の死亡率(人口10万人対)は男性で全国の2倍。

◇アルコール依存症の疑いがある人の数は、男性は全国の約2・6倍、女性は7・5倍。問題飲酒の数は男性なら全国の1・8倍、女性は全国の5・7倍。

「沖縄県民はシャイな気質があり、素面では本音を言えない傾向があります。そこで酒の力を借りて心の内をさらけだすという文化が育っていったのでしょう。とはいえ、サラリーマンでも酩酊するまで飲み、翌日は遅刻や無断欠勤する者が決して少なくありません。宴席では喧嘩が起きることもあります。もっとも最近、酒席でのマナーは向上しており、その影響で路上寝が問題視されているとは思います。県民が真剣に適正飲酒を考える時期に来ていると言えるでしょう」

 惠氏は現在の沖縄県金武町が村だった1914(大正3)年、節酒会が結成された故事を思い浮かべる。村は最初、海外移民を推進したが移民先で教養の不足から本土出身移民と齟齬を生じていた。そこで一丸となって節酒運動を展開、浮いた酒代と移民からの送金で沖縄初の鉄筋コンクリートの学校を建設し学事を奨励した。これは大成功、国内外に多くの人材を輩出、地域振興が一挙に進んだという。

 かつて「米百俵の精神」が話題になったが、今の沖縄に必要なのは「酒1合でやめる精神」なのかもしれない。

週刊新潮WEB取材班

2019年11月18日掲載

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