「孫正義」一世一代の大芝居で取り繕う窮状 真っ赤っかどころか火の車「ソフトバンク」破綻への道

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保守主義の原則

 孫氏は6日の記者会見で「もはや私は会計上の売り上げとか純利益とかに目線を置いて経営をしていない。株主価値、これを最大のものさしとしている」と発言し、決算説明会のプレゼン資料等でも“株主価値”が増えていることを強調していた。

 具体的には、SVFが3兆2千億円、アームが2兆7千億円、スプリントが3兆1千億円、ソフトバンク株式会社が4兆8千億円、アリババが13兆3千億円、その他が8千億円で、合計27兆9千億円の資産価値に対して純負債が5兆5千億円。正味株主価値22兆4千億円となり、これは第1四半期末より1兆4千億円増えているというのだ。

 そもそも、会計上、株主価値なるものは定義されていない。SBGが独自に定義し、彼らだけに通用する株主価値というわけだが、当のSBGはその定義を明示していない。最近、日本においても財務諸表上の経営指標ではなく、会計上の定義がない独自指標を使って開示を行う企業が散見されるが、困ったことである。米国では10年ほど前に大流行したことがあり、米国証券取引委員会がこれを規制するに至っている。

 今回は、ウーバーやウィー社の失敗で巨額減損が出たので、「国際会計基準では経営実態は分からない」などとして、独自指標の株主価値なるものを持ち出してきた。この人たちは自分に都合が悪くなると基準を変える。SBGの一般投資家に対する姿勢に疑問を感じる。

 先に触れた通り、SBGの連結有利子負債は合計16兆円あるが、彼らは持株会社たるSBG単体の純負債を5兆5千億円と見積もり、独立採算子会社の有利子負債を除外している。資産評価の内、SVF、アーム分は非上場なので、負債の返済原資としては評価できない。ソフトバンク株式会社とアリババ及びスプリントは上場株ではあるが、これだけ大量の株式を売却することは事実上不可能なので、これまた負債の返済原資としては評価できないと思う。

 それでもあえてSBGの連結株主価値を会計上算定すると、アリババとソフトバンク株式会社の含み益を考慮しても、14兆円程度のものだと思う。彼らが定義する株主価値は22兆4千億円だから大いに乖離している。かねてより私が一貫して主張しているように、会計上、SBGが3兆円超の実質連結債務超過という事実は動かず、その経営は売るに売れないアリババ株の含み益依存で、まことに頼りないものなのである。

 また孫氏は、プレゼンの中で、SVFの累計投資実績として、投資88銘柄のうち価値が増加したのは37社で、その内訳は実現益が5千億円、評価益が1兆3千億円と明かした。他方、価値が減少したのは22社で、その内容は評価損が6千億円だという。益が1兆8千億円に対して損が6千億円なので、SVFは全体として高い投資パフォーマンスを出していると自賛しているが、この考え方は間違っている。

 会計では保守主義の原則がある。保守主義の原則とは、「予想される利益は取り込まないが、予想される損失は取り込むという考え方」のことを言う。

 保守主義の原則は複式簿記700年の人類の英知である。保守主義の原則の下でのSVFは、益が5千億円に対して損が6千億円なので、累計投資実績は1千億円の赤字なのである。孫氏は、ウィー社の経営者の手腕を見誤ったことを反省するなどと訳の分からないことを言っている。

 しかし、本当に反省しなければならないのは孫氏自身の経営思想そのものではないか。6%もの高利で資金を10兆円も集め、累計正味1千億円の損失を出しながら、なおSVF第2号などと言っては際限なく投資を続けようとする経営思想こそ批判されなくてはならない。

 今回、SBGは本体で5千億円、SVFで4千億円、合計9千億円にのぼるウィー社の評価損を取っており、これは私が想定していた規模とほぼ一致する。現時点において、未計上の最大評価損は、ウィー社に対する追加ファイナンス1兆円から出てくる評価損ということになる。

 そもそもSBGは本体とSVF合計で1兆1千億円をウィー社に投資し、その後一旦評価益を出しながらも、今回9千億円の評価損を出した。それに対して何を血迷ったか、更に1兆円のファイナンスを打つ。ならば、追加1兆円のファイナンスから1兆円の追加評価損が出てくる可能性がある。

 ウィー社の業績は新規ビル投資を止めれば時間が解決して黒字になる――。孫氏はそんな調子のよいことを言うが、そうは問屋がおろさない。ウィー社は700戸のビルを開発している。最初の100戸のビルが12カ月で黒字化したのならば、次の100戸の黒字化は15カ月かかるはずで、更に次の100戸は20カ月、30カ月……とどんどん黒字化に要する期間は長期化していく。条件のいいビルから事業化し、残されたものはどんどん条件が悪くなるに決まっているからだ。ウィー社への追加投資はSBGの命取りとなるように思う。

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