「孫正義」一世一代の大芝居で取り繕う窮状 真っ赤っかどころか火の車「ソフトバンク」破綻への道

企業・業界 週刊新潮 2019年11月21日号掲載

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 財務諸表危険度分析プログラム「フロードシューター」を開発した会計評論家・細野祐二氏は、ライザップやZOZOなどの資金繰りの悪化を予言し、的中させてきた。赤字決算に転落したソフトバンクグループの窮状もかねて指摘。破綻は現実味を帯びているのか。

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「ボロボロ、真っ赤っかの大赤字。まさに大嵐というような状況だ」

 15年ぶりの営業赤字決算を11月6日15時に発表した説明会の冒頭で、孫正義会長兼社長はこうアケスケに話した。彼は一般向けのプレゼンテーションが非常に上手だ。決算説明1時間、質疑応答1時間、合計2時間の長丁場だったが、孫氏はこれらをすべて一人でこなした。質疑応答を聞いていてもそつがなく、専門用語の使用を極力避け、素人受けのするストーリー展開に持ち込む。取材するマスコミの勉強不足もあるものの、孫氏の頭脳の良さを感じた。

 プレゼンの出来は良く、結果的にその翌日のソフトバンクグループ(SBG)の株価はほとんど下がっていない。孫氏はこの決算説明における所与の目的を達成したと思う。このことから、我々は、「SBGの経営において、孫正義社長とそれ以外の経営陣あるいは幹部社員との経営者としての実力格差が甚だしい」と理解できる。

 これだけのプレゼンを一人でやり切れる経営者を抑止できる従業員など存在しない。ということは、孫氏の理念先行型の経営と現場レベルの経営実態に大きな乖離が生じているに違いない。

 SBGは今回、ウィーワークを運営するウィーカンパニーへの投資で9千億円もの大損を出した。その救済に更に1兆円ものファイナンス(資金供与)をするのだから、その資金繰りは大変なはずで、社内は上を下への大騒ぎになっているに違いない。しかし、これも孫氏に言わせれば「反省はするが萎縮はしない」ということで済まされてしまう。金の苦労や投資家の批判をものともせず、それらは部下の仕事と切り捨てられるからこそ、大借金をして投資した銘柄で大損を出しても平然と夢を語れるのだろう。良くも悪くも孫氏の強烈な個性がSBGの最大の長所であり、最大の弱点でもあるのだと思う。

 現在のSBGの生殺与奪の権を握るのは、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)という10兆円規模の巨額ファンドだ。孫氏の個性が悪い方へ振れた時、会社の存在そのものが危うくなりかねない。SBGは危険領域に突入している。

 SBGの株価の推移を見ると、2018年5月の時点で3800円台だったものが、9月にかけて5700円に達した。SBGが発表した巨額利益を好感したものだが、その後3カ月で3500円まで急降下。巨額利益はSVFの計上する非上場株の評価益に支えられていたわけだが、それが紙の上の利益に過ぎないとマーケットが嫌気したのだ。

 非上場というからには市場価格は存在しないわけで、それをどう評価するかは金融工学的に判断するということになっている。

 金融工学的時価とは対象企業の事業計画を基に算出された理論価格のことを言う。数学的に正しいように見えるかもしれないが、将来の事業計画自体は作文に過ぎない。赤字の計画など誰も立てることがないし、実現するかは誰にも分からない。そうやって非上場株に主観的な株価をつけ、評価益を出しているだけだと思われたところ、このうちウーバー・テクノロジーズが19年5月に上場。ウィー社のIPOも同年9月に決まり、株価は反応して6千円に達した。しかし、その後にウーバー株が下落。孫氏は“市場が間違っている”と、怒りの自社株買いに打って出たが、ウィー社のIPOが延期となったこともあり、株価は4千円台前半に戻っていたのである。

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