認知症高齢者の“異常性欲”とどう向き合うべきか 専門医が教える傾向と対策

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薬に頼る前に若いうちから自制心を養う

 認知症患者だからといって、セクハラ行為が許されるわけではなく、何らかの対処が必要だ。とはいえ、介護現場の職員は具体的にどうすればいいのだろうか。

「まず、介護職員ができることは、そういう患者さんからのセクハラ被害に遭ったら、『やめてください!』と毅然として断ることです。そして、それを抱え込まずに上司に報告することも大切。介護職員みんなでその情報を共有し、問題のある患者さんと若い女性の職員ができるだけ2人きりにならないよう配慮したり、ベテランの職員が『○○さん、その子に触るんだったら、こっちも相手して』などと言ってうまくカバーするなど、その場その場で臨機応変に対処する必要があります」

 また、異常性欲をある程度抑えることができる特効薬もある。「メマリー」という薬だ。

「もともとメマリーは、認知症の進行を予防する薬で、幻覚や妄想を抑制する働きがあるのですが、性衝動にブレーキをかける効果もあります。その効果はてきめんで、気持ちがとても穏やかになり、認知症を患うパートナーの異常性欲に悩んできた配偶者も驚くほどです。ただし、認知症になったから異常性欲の症状が出たのではなく、若い頃からセクハラ癖があったという患者さんは、薬を処方してもなかなか治りませんね。最も効果的な解決策は、若いうちからセクハラ行為はやらないように、肝に銘じる事です」

 さもなくば……。

「周囲の迷惑になるばかりではなく、患者さん本人の人間としての尊厳が失われるでしょう。せっかく長年まじめに生きてきたのに、人生の最後になって異常性欲が出てしまえば、それまで築いてきた社会的信用や実績も地に落ちてしまうかもしれません」

 誰しも「あの人は、最後は色ボケで大変だった」などとは言われたくないものだ。

取材・文/星野陽平

2019年10月30日掲載

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