認知症高齢者の“異常性欲”とどう向き合うべきか 専門医が教える傾向と対策

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計画性のある悪質なセクハラもある

 こうしたセクハラ行為に及んでしまうかどうかは、認知症の進行具合と関係があるそうだ。

「一概には言えませんが、認知症や脳腫瘍で前頭葉、側頭葉に重度の障害が生じるとタガが外れたような状態になり、それまで普通だった人も、周囲に見境なくセクハラ行為を働くようになることもあります。そういう人の中には、計画性がなく突発的で、悪気なくしてしまうというケースも。これは個人的な意見ですが、教師や公務員など堅い職業に就いていた人に多いように感じます」

 軽度な認知症の高齢者の場合にもこんな問題がある。

「認知症が軽度な人は、わりと計画性がありますね。トイレ介助のため、職員と密室で2人きりになった瞬間を狙い澄まして、セクハラ行為に及んだり……。文句を言わないような大人しい介護職員を狙うこともあるようです。こうした悪質な人は、厳しく対処しなければなりませんが、悪気がない人も、抱きついたり、タッチしたりとやることは同じなので、対処が難しい面があります」

 程度の差はあれ、認知症患者の悪気の有無を断定することなど不可能に近い。そして、こうしたトラブルが続けば、当然、介護現場の離職率にも影響してくる。

「高齢者は体力も運動能力も低下しますから、男性患者さんに女性職員が押し倒され、性被害にあった……というケースは私が知る限りありません。しかし、介護職を志す若い女性が介護現場を見学しに来た際、セクハラ行為を働いている患者さんがいることを知ってその道を諦めてしまったということもありました」

 介護現場で働く人は、男性よりも女性のほうが多く、特に訪問介護では8割以上が女性だと言われている。介護業界で常に人手不足が叫ばれている原因は、給与や労働時間だけではなく、患者によるセクハラの問題もあるのだ。

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