セクハラも色恋も暴力もある「老人ホーム」の実態

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団塊世代が70歳に

 昨年2017年は、膨大な数の「70歳の日本人」が誕生した年となった。というのも、団塊世代の第一陣、昭和22年生まれが70歳になったからだ。いくつかの定義があるが、主に「団塊世代」とは、昭和22年~24年生まれの第1次ベビーブーマー世代を指す。

 今後、この世代の多くが人生設計を考えるうえで、選択肢の一つとして浮かんでくるのが老人ホームである。団塊世代の直面する様々な問題をレポートした『団塊絶壁』(大江舜・著)では、現在の老人ホームにおける生々しくも興味深いエピソードが紹介されている。

 老人ばかりだから枯れて平和な世界……などというのは甘い幻想。そこもまた俗世であり、セクハラ、色恋、暴力と何でもありの世界なのだ(以下、同書より抜粋・引用)。

いっしょにお風呂に

 病気で身体が麻痺している場合、性的なアクションを起こすことは難しい。しかし問題は頭も体もまだ元気な入所者だ。

 著者が取材したのは東京都内にある約200人収容の特別養護老人ホーム。ある元有名企業のエンジニアは、女性職員をちゃんづけで呼び、「いっしょにお風呂に入って洗いっこしよう」などとセクハラ発言を連発するのだという。

「この方は足の指の間を洗ってもらうのが好きで、『気持ちいい! もっとやってよ!』と女性職員にねだります。 反面、男性職員には厳しくて、『お前がやったからケガをした』と言いがかりをつける。だから結局女性職員が世話をすることになり、セクハラが起きて……という悪循環です」(女性介護士の話)

 セクハラは論外だが、入居者同士の色恋であれば、微笑ましいと言えなくもないだろう。ただし、驚きなのは、70代といった「若手」に限らないと点だ。

「ロビーの長椅子で、おっぱいを触ったり、チューしあいながら、ニコニコして座っている。90代でも、異性を忘れない。車いすを利用されている女性の方ですが、男性職員の股間をタッチするんです。男性の場合は、夜、寝たきりの女性の上にまたがっているところを職員に発見された方も。未遂だと言ってましたが、本当のところはわかりません」(同)

嫌われる「傲慢」

 セクハラも問題ではあるのだが、ホーム内で嫌われるのは別の要因のほうが大きいようだ。同ホームの男性介護福祉士によれば、嫌われる人の特徴は大きく三つあるという。

 一つは「徘徊」。他人の部屋に入ったり、ところ構わず放尿、排便をする人は職員が手を焼くことになる。同様に「暴力」も嫌われる。

 こういう入居者の対応が職員にとって苦労のタネとなるのは想像に難くない。しかし、実は職員にとって最も厄介なのは「スタッフを使用人扱いする入居者」なのだという。

「不動産会社の元社長で、認知症になり入居した男性がいました。ご家族がお見舞いに来て、私たちにお礼を言って下さっている場面でこう言い放ったんです。

『お金を払っているんだから、お礼なんてする必要ない』

 認知症でも、そういうところははっきりしているんですよね。このタイプは男性に多いのですが、裕福なご家庭の女性も目立ちます」(男性介護福祉士)

 傲慢な人間が嫌われるのは、ホームの外でも中でも同じこと。もっとも、あまり調子に乗っていると痛い目に遭うかもしれない。人材不足で採用され、ロクに研修も受けずに現場に放り込まれた職員もいる。彼らは老人の天敵ともなりえる。実際に虐待が疑われる事件はすでに何度も報じられている。この種の事例は右肩上がりに増えているのだ。

 政府は今後の超高齢化社会に向けて特養などを大量に作っているという。しかし、こうした人出不足もあり、大量に生まれる「団塊老人」をきちんと収容できるか、その先行きは甚だ不透明だ。

デイリー新潮編集部

2018年3月2日掲載

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