お小遣い月3万円、専業主婦妻の実家のそばに家を建てた31歳イクメンサラリーマンの思考回路

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何も考えずに受け入れる・受け流す?

 前回の原口さんへの取材では主にフェミニズムに関して尋ねたが、寺山さんは東大生による強制わいせつ事件も詳しくは知らず、先日ネット上で話題になった、レペゼン地球のDJ社長によるセクハラネタ騒動も知らなかった。おそらく、私が身を置いているメディア業界が敏感なだけで、一般的なサラリーマンは仕事と家庭のことで精一杯なのかもしれない。

 とは言え、企業と男女における問題が無関係なわけではない。建築現場には簡易トイレが設置されてあるが、お世辞にも綺麗だとは言えず、寺山さんはできるだけコンビニのトイレを使用している。圧倒的に男性が多い環境で更衣室もないので、今後女性の部下が入ってきたときの対応をどうしようか悩み中だ。

「現場はそんなに優しいことを言っていられる環境ではありません。だから、どこまで女性の部下に厳しく言っていいのか戸惑います……。また、大手の現場だと最近は『女性にも配慮しましょう』と、更衣室があったりトイレもウォシュレット付きだったりしますが、それはごく一部の現場です。女性の現場監督はまだまだ少ないです。女性を入れるならまずトイレから改善すべきだと思います」

 家庭のことは妻任せのような昭和の男性ではなく、寺山さんは世の男性以上に育児に協力的だ。家に早く帰れるよう上司に交渉したことにも驚いたが、これは昨今の働き方改革が影響している可能性もある。

 しかし、妻の実家のそばに家を建て、寂しがり屋の妻のガス抜きをしていることが、前回取材した原口さんと同じく、思考の停止や楽な方へ身を任せているようにも思える。これが悪いことだと一概には言い切れないが、何も考えずに受け入れる・受け流す態勢が個人的に引っかかった。寺山さんはこのサイクルでうまく回っているが、女性によっては「もっと考えて」と不満を持つ人もいそうだ。

 同年代の二人の男性の話を聞き、意外と保守的でありながら逃げ道を作っている傾向があることが分かった。ただし、これは私がマッチョイズムに毒されているだけかもしれない。

 同年代でたった二人の男性の話しか聞いていないため断言はできないが、男女は完全にわかり合うことはできない。だからこそ男性学も女性学も、もっと世の人は知るべきだと感じた。

 そうすれば、男女とも生きやすい世界が見えてきそうだが、それはそう簡単ではないことを、先進国なのに低いジェンダーギャップ指数、ジャーナリストの伊藤詩織さんへの性暴力事件がもみ消された件、カネカの男性社員が育休明けに転勤を命じられた騒動などが物語っている。

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姫野桂(ひめの けい) 宮崎県宮崎市出身。1987年生まれ。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをして編集業務を学ぶ。現在は週刊誌やWebで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。著書に『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)。ツイッター:@himeno_kei

2019年8月30日掲載

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