中毒者が急増中! 「バーニラ、バニラ♪」「俺の風♪」はなぜ耳に残るのか?

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 新宿や渋谷など首都圏の繁華街を走る宣伝カーから流されている「バーニラ、バニラ、高収入♪」というゴキゲンな曲。これはキャバクラや風俗求人サイトの宣伝曲だが、そのキャッチーさから今や子どもまでが口ずさんでいる。他には、男性の夜のお仕事求人サイト「俺の風」の宣伝曲も、一度聴いたら耳から離れないと中毒者が急増中だ。これらの曲はなぜ、こんなにも人々の耳を虜にするのだろうか。これまで700本以上のCMソングを手がけてきた作曲家の近谷直之氏に聞いた。

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 バーニラ、バニラ、バーニラ求人♪
 バーニラバニラでアルバイト~♪

 こんな複数の若い女性の大音量の合唱を引っさげ、首都圏の街を爆走する宣伝車を見たことはないだろうか。そのキャッチーかつハイテンションな曲はにわかに話題となり、YouTubeの公式動画は100万回再生を誇っている。

 一度聞いたら最後、あの女子たちのキャピついた声色とフレーズが耳から離れず、頭の中で無限ループされてしまうという人も多いに違いない。その理由について、近谷氏は次のように分析する。

「まず、フレーズを連呼することで記憶に残りやすくなる、ということが挙げられます。単純接触効果といって、広告の世界では映像や商品名に多く触れれば触れるほど、印象に残り効果があると言われています。『バニラ』も広告ソングなので、フレーズを連呼して印象に残す狙いがあるのだと思います」

 また、歌詞に音程がないことも特徴的だという。近谷氏が“聴き起こして”くれた楽譜を見ると、そこに記載されている音符の種類が少ないことがわかる。

「音程を取らなくてもいいので、口ずさむハードルはぐっと下がります。チアリーディングの掛け声(『Go!Fight!Win!』など)がいい例で、子どもから大人まで誰でもマネすることができますよね。リズミカルだけど音程がない、キャッチーでマネしやすい要素が揃っています」

 同じように、最近テレビで頻繁に見かける日野自動車のCMフレーズ「トントントントン ヒノノニトン♪」も音程がない。これにおいても、音程のなさがいかに口ずさみやすさともリンクしているかが分かる。

「休符」と「4つ打ちリズム」でファンキーに

 もう少し音楽のテクニカルな観点から、「バニラ」が何故耳に残るのかも検証してみよう。

「特徴的なのが休符(音を一時的に休止する記号)。『バニラ』と『バニラ』の間には休符が入っているんです。『バーニラ、ウ(休符)、バニラ、ウ、バニラ、求人♪』という具合ですね。この休符があることによって、ファンクのように裏拍(リズム表現の一つ。『1と2と3と…』とリズムを取った時の『と』にあたる部分)が強調されるんです。裏拍を感じることができると、曲はリズミカルでキャッチーな印象になります。仮に休符がなければ、非常にのっぺりとした印象になりかねませんでした」

 このように、休符があることで裏拍が強調され、曲全体が締まり、歯切れの良いフレーズとなっているというわけだ。さらに、キャッチーに受け取られやすい特徴的な“仕掛け”も施されているという。

「この曲は、ずっと4つ打ちのリズムなんです。『ズッチー ズッチー ズッチー ズッチー』というリズムが、歌詞の裏で流れていて途切れない。これにより、どこを切り取っても盛り上がっているように聞こえます。街宣車で流しているため、不特定多数の通行人が、どの部分で聞いても耳に残るように、工夫されていますね。そして、極めつけは最後。休符を織り交ぜながら細かくきていますが、『高~収~入~』の部分で『タン・タン・タン』と単純に終わらせることで、きちんと曲として“完結”させています」

 このように、さまざまな要素が合わさり、バニラは我々の耳から離れてはくれないのである。

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