「金の亡者」と言われた本庶佑博士が小野薬品に反論2時間

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騙すのは簡単

 でも、僕としてはPD―1抗体に大変な可能性があると信じていましたから、諦める気はなかった。それで知り合いの、とある創薬ベンチャー(米)に声をかけたら、すぐに乗ってきた。契約にあたっては小野が開発を放棄するという条件がつきました。そうしないとベンチャー企業にはメリットがありません。それで、小野に権利放棄を求めたら「ちょっと待ってくれ」と言葉を濁す。それから3カ月ぐらい経って、「やっぱりうちが開発します」と翻してきたのです。聞けば、メダレックス(後にブリストル・マイヤーズスクイブ=BMS=が買収)というパートナーを見つけたという。実際には小野が見つけたのではなくて、公開特許公報(特許申請すると1年半後に公開される制度)から、我々の特許申請を見つけてメダレックス側から連絡してきたのですけどね。

 PD―1抗体を薬として開発するために小野と契約を交わしたのは06年のことです(正確には、共同特許を小野薬品が独占的に使い、本庶氏は一定の対価を得るという契約)。しかし、私はパテント(特許)に関してまったく知識がありません。契約書を読み込んであれこれ指示することは出来ないので、大学の知財担当(「医学領域」産学連携推進機構)に委託したわけです。私は話し合いの場にもいませんでした。当時、京大は国立大学法人となった直後で、知財の担当部署も出来たばかり。でも、相手は昔から付き合いのある小野薬品です。誠意をもって契約してくれていると思っていました。そうするうちに、契約書が送られてきたので中身も見ないでサインしたわけです。今思えば大学教授なんて騙そうと思えば簡単です。商売のことなんか分からないんだから。でも、相手は1部上場企業でしょう。詐欺まがいのことをされるなんて想像もしていませんでした。

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