31歳女性ライターが「顔出し」する理由と、それにまつわる危険を防ぐライフハック

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気をつけているのに被害に遭ってしまう

 女性であるだけで日常生活には危険が潜んでいる。特に女性の一人暮らしは怖い。

 上京以来、オートロックの物件にしか住んだことがない。これは親がオートロックにしろとうるさいからであったが、家賃の安さからオートロックでない物件に住みたいと思っていた時期もあった。その頃はまだ若く、女性の生きづらさに気づいていなかったからだと思う。

 今住んでいる部屋は、モニター付きオートロックで録画もできる。先日外出先から帰宅してモニターの録画をチェックしたら、運送会社の人には到底見えない、見知らぬ男性がインターホンを押している動画が録れており、背筋がゾッとした。

 離婚をして久しぶりの一人暮らしを始めた知人女性は「家に男性がいない怖さ」を語っていた。逆に、「家に男性がいることの安心感が、結婚して一番良かったこと」と語った既婚女性もいた。

 昔は知らない男性と二人きりになってしまうエレベーターにも気にせず乗っていたが、年上の知人女性から「自意識過剰かもしれないけど、予防はし過ぎるくらいがいい。男性とエレベーターで二人きりになりそうな場合は見送ってから乗ったほうがいい」と言われ、それ以降、なるべくエレベーターで男性と二人きりにならないようにし、二人きりになってしまったときは警戒している。

 でも、女性であるだけで、なぜここまで用心しないといけないのだろうか。性犯罪や暴行事件などが起こると「夜遅くに出歩いていた女性が悪い」「誘うような格好をしていたのではないか」と、セカンドレイプが起こる。私たちは気をつけているのに被害に遭ってしまうのだ。これ以上何に気をつけろというのだろう。

 今の時代、無意識のうちにSNSで自ら、または他人から個人情報を漏らされてしまっていることがある。R氏も彼女に対してこの危険な行動を取っていたのだ。断片的な情報であっても、それらを集めれば点と点が線で結ばれるし、アップした画像を解析すれば、どこで撮影されたのか、どんな機種で撮影されたのか特定することが可能だ。

 小金井ストーカー殺人未遂事件では、加害者は被害者女性からSNSでの返信がなかったことからストーカー行為を繰り返し犯行に及んでいる。

 SNSはその人の行動のいきさつを知る手がかりになる。私も最近はなるべく「●●に行ってきた」と過去形で時間をずらし、タイムラグを作って投稿するよう気をつけている。「明日●●に行く」と予告をしたり、「今●●にいる」という現在進行系で投稿をすると、「私のことをSNSでよく知っているけど私は全く知らない誰か」にストーキングされる可能性もなくはない。

 今やSNSはほとんどの人がアカウントを持っている時代。SNSのおかげで友達が増えた、恋人と出会えた、仕事に繋がった、世界が広がった、という人も多いし、メリットもたくさんある。

 友人でも、SNSで知り合った相手と結婚した人がいるし、私自身、SNSがきっかけでリアルで会って仲良くなった人もいる。15年ほど前までは、ネット上で出会った人とリアルで会うことに眉をひそめる人が多かったが、今は出会いのツールの一つとして確立している。

 しかし今一度、その危険性についても考えてみてほしい。そして、女性は男性の何倍もセキュリティ面で気を張っていることも。

 姫野桂さん連載『「普通の女子」になれなかった私へ』バックナンバーはこちら https://www.dailyshincho.jp/spe/himeno/

姫野桂(ひめの けい)
宮崎県宮崎市出身。1987年生まれ。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをして編集業務を学ぶ。現在は週刊誌やWebで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。著書に『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)。ツイッター:@himeno_kei

2019年5月31日掲載

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