「パリ人肉事件」佐川一政のいま、ドキュメンタリー映画に出演の実弟が初告白

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兄とはまた異なる性癖

:父は多摩にマンションを持っていたのですが、亡くなった後は3000万円で売却。それを遺産として、兄とぼくとで折半しました。でも兄は、そのお金はすぐに使ってしまったようです。両親が亡くなると、ぼくにお金の無心をするように……。ぼくが大事にしていたチェロと、部屋に飾っていたリトグラフを売り飛ばしましたからね。チェロが100万円、1枚50万円のリトグラフを2枚。ある豪雨の夜、兄から電話があって、「近くの飲食店で話が聞きたいという人がいるから来てくれないか」と言われ店に行くと、待てど暮らせど誰も来ない。仕方なく家に帰ると、チェロもリトグラフもなくなっていました。兄はぼくの部屋の合い鍵を持っていたので、ぼくが外に出るチャンスを待っていたわけです。結構な策略家です。チェロは銀座の楽器店に10万円で売ってしまったようです。リトグラフは大して値がつかなかったようです。

――そんなことまでされていながら、純氏は楽しそうに話すのである。

:友達にも「なんで怒らないのか」と言われました。でもね、兄貴は怒ったら何するかわからないところがあるんです。兄貴が和光大学に通っていた頃、当時ぼくも実家に住んでいました。ある時、些細なことで兄とケンカになったんです。すると激昂した兄は、包丁を持ち出して、ぼくを追いかけてきたんです。本当に「殺される」と思って自分の部屋に逃げ込んだのですが、外から「ガン!ガン!ガン!ガン!」と音が……。ひょっとしたらとは思いましたが、後で見てみると、ぼくのチェロの表板がバラバラに壊されていました。譜面台で叩き割ったそうです。修理屋さんに持って行きましたが、「これは直らないね」と言われてしまいました。兄にはそういう一面があるんです。

――その兄を、今は看病し、一緒に映画にまで出た。どういう心境なのだろう。

:今回の話が来た時、OKしたのは兄とぼくの2人です。監督の2人がハーバード大学の人類学者と映像作家なので、撮影を通じて、どうして兄はこうなってしまったのか解明されるかもしれないと考えました。兄は「小さい時に人を食べたいと思うようになった」と言いますが、育ち方も原因にあるのかと。そして撮影が進むうちに、自分の性癖も出したほうが医学的に解明してくれるのではないか、と思うようになったのです。もちろんぼくは人を食べたいとは思いませんが、自分の腕を痛めるのが好きなんです。兄貴の性癖とぼくの性癖は違うものではなく、どこかで繋がっているような気がするんです。

――映画では途中から純氏がクローズアップされる。自分の二の腕を有刺鉄線でぐるぐる巻きにし、束にした包丁で突く……。

:撮影の時は、どこを撮られているのかわかりませんでしたが、ぼく自身があれほどクローズアップされるとは思いませんでした。3歳の時に、たまたま腕に輪ゴムがからんだのが、なんだか気持ち良かったんです。以来、虫眼鏡の輪の部分であるとか、机の中にあるものを、腕にはめるようになりました。どういうわけか、腕だけなんです。ぼくが結婚しなかったのは、兄のせいばかりではありません。ぼくにもそうした性癖が子供の頃からあったわけです。これは2人に共通したものなのかもしれません。両親はぼくたちを差別することはありませんでしたが、結構厳しくて、女性が載っている雑誌のグラビアも見てはいけないと育てられました。それが反動となって、興味が妙な方向に走ってしまったのではないか……。

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