「回らない回転寿司」がブーム!? “特急レーン”導入でこんなにあるメリット

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業界も消費者も成熟

「回らない回転寿司を食べるのなら、普通の寿司屋に行けばいいのに」と首を傾げる向きもあるだろうが、やはり“回らない回転寿司”と“普通の寿司屋”は、似て非なるものであることが分かる。

 消費者にとっても「回らない回転寿司」のメリットは多い。気軽に店を訪れ、タッチボタンを押すだけで、「自分のために握られた寿司」を味わうことができる。仏頂面の寿司職人に気を遣う必要もない。

 会社側はコスト削減が期待できる。元気寿司が自社の来店客を調査したところ、全注文のうち、回転レーンの寿司が取られた比率は僅か15%だったという。85%は客が自分で注文した寿司なのだから、回転分は人件費でも原材料費でも無駄が多いことが明白だ。

 フードサービス・ジャーナリストの千葉哲幸氏は「今後は“回らない回転寿司”の比率が増していく可能性が高いでしょう」と予測する。

「回転寿司は1970年代に最初の興隆を迎えますが、寿司という“ご馳走”が目の前を流れる興奮が人気の理由でした。それから半世紀が経ち、業界も成熟期を迎えました。消費者側も、様々な場面に応じて回転寿司を“利活用”する経験値を手に入れたと思います」

 先日、千葉氏が夕方に大手チェーンの回転寿司を訪れると、店内は高校生のカップルが目立っていた。そして彼らは寿司を手に取ることはなく、もっぱらスイーツを食べていたという。

「今の若い人は、回転寿司をファミレスのように使うのかと感心しましたが、よく考えれば、大人も変わりません。多忙な時のランチタイムなら、ぱっと回転寿司に入り、回転レーンの皿を素早く食べて勘定するのがベストでしょう。一方、休日の午後なら、自分で注文した寿司を落ち着いて味わいたいと思うはずです。駅前や繁華街の店舗なら回転レーンは存続し、ロードサイドや住宅街の店舗なら特急レーンだけのタイプが増えていくと見ています」(同・千葉氏)

 近年は「グルメ回転寿司」と呼ばれる、地方発で高級志向のチェーン店も成功を収めている。大手チェーンにおける“脱回転寿司”は、「グルメ回転寿司は高額すぎるけど、自分もお好み寿司を楽しんで見たい」という層に歓迎されているようだ。

週刊新潮WEB取材班

2019年5月14日掲載

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