巨人「菅野」は3連発浴びた“神宮ショック”から立ち直ったか【柴田勲のセブンアイズ】

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 5月1日の巨人対中日戦、新元号「令和」初戦は巨人が勝って歴史的な1勝を挙げた。

 この試合、私が注目したのは先発・菅野智之投手だった。4月25日のヤクルト戦。プロ初の1試合3連発を浴びて四回途中KOの「神宮ショック」を振り払ったかどうかだった。

 結果は被安打7、1失点の完投勝利で今季4勝目を挙げた。1000奪三振も記録した。だが、この日の投球、私にはあまり参考にならなかった。

 一回に4点、二回に坂本の本塁打が出て5点をもらい、余裕を持って、自分のペースで中日打線に対していた。競った試合での投球が見たかった。気になったのは九回だ。

 ベンチにすれば「シャットアウト、頼むよ」と送り出したはずだが、京田陽太、大島洋平、ダイアン・ビシエドに3連打されて1点を失い、なお1死後には高橋周平にもヒットを許して満塁に詰め寄られた。堂上直倫を二ゴロ併殺打に切り抜けたが、ヒヤリとする場面が続いた。

 昨季までの菅野ならば、こんなにもたつかずに完封していたと思う。今季6試合目のこの日、1発こそなかったが、これまで被本塁打は8本だ。5試合でだから多すぎる。

 試合前、水野雄仁投手コーチは、「なぜこんなに(本塁打を)打たれているのか…」と首を傾げていたし、女房役の小林誠司は「今シーズンは(昨年に比べて)時々甘く入ってくることがある」と話していた。実際、九回の3連打はいずれも2球目で甘く入ってきた変化球だった。

 菅野は真っすぐは速いし、カーブ、スライダー、フォークなどの変化球も一級品で、おまけに制球力も抜群だ。四球は期待できない。元々、荒れ球なんてない。打者は2ストライクと追い込まれたらかなり苦しくなる。

 制球力のいい菅野に対して、打者はストライクゾーンギリギリ、つまり厳しいコースに来ると考えて早いカウントから狙ってくる。そこへ甘い球が入ってたら打ちやすくなる。被本塁打8の原因はここにあるのだと思う。

 4月25日のヤクルト戦はその典型だった。3連発のきっかけを作った川端慎吾のヒットは3球目、青木宣親、山田哲人の本塁打2球目でスライダー系を狙われた。この日は四回に1死から青木、山田、ウラディミール・バレンティンに3連打されてマウンドを降りている。

 さすがに1日はストライク先行の投球を心がけて、序盤はスライダー系を封印してカーブ、フォークを多投していた。真っすぐの最速は152キロだったから、緩急をうまく使って八回までは12球団チーム打率ナンバーワンの中日打線を牛耳った。

 修正能力の高さを改めて立証した菅野だが、今季は時として狂う制球力が気になる。一度打たれ出すと、続く傾向がある。巨人の絶対的エースとして他球団はより一層、研究・対策を進めてくるだろう。菅野はどんなに遅くなっても必ず登板した日のうちに自分の投球内容をチェックするという。本人も完封勝利を逃して「悔しい」と話していた、九回のマウンドの反省を生かして、次回、最後までスキッとした投球を見せてくれることを期待したい。

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長、14年から巨人OB会会長を務める。

週刊新潮WEB取材班

2019年5月3日掲載

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