横浜「トゥクトゥク」物語 老舗玩具店主が3輪バイクで“移動式写真屋さん”を始めるまで

ビジネス

  • ブックマーク

Advertisement

300万円でトゥクトゥクをオーダー

 とりあえず道路交通法や旅客運送法、道路運送車両法をひと通り調べ、トゥクトゥクを使ってどんな商売が可能かを模索した。先述のとおり、日本では色々と規制が多く、ナンバーをつければ道路は走れるが、タクシーとして営業はできない。そこで辿り着いたのが、トゥクトゥクを使った「フォトクルージング」というオリジナルの商売である。これなら法的には何の問題もないはずだ。さっそく足立さんは沖縄県の業者に依頼して、フルオーダーのトゥクトゥクを300万円かけて作ることにした。これと前後し、2017年春に大手家電メーカーを退職。なんの迷いもなかったという。

「トゥクトゥクの製作に半年ほどかかるということだったので、タクシー会社で1年間修業することにしたんです。タクシー業務を通して、街中の人の流れや、距離と移動時間の感覚を把握しておきたかったわけですけど、(タクシー業ができる)第二種運転免許が欲しかったというのもありましたね。1年間勤務すれば免許費用をタクシー会社が負担してくれることになっていたので、きっちり1年間勤めてから辞めるつもりでした」

 いまはトゥクトゥクでタクシーは営業できないが、近い将来、ライドシェア・ウーバーが認可されれば、第二種運転免許で営業できる可能性もあるとの判断だったそう。立ち飲み屋さん修業にしても、タクシー修業にしても、発想はなかなか斬新だが、石橋を叩いて慎重に準備するタイプであるようだ。とはいえ、トゥクトゥクドライバーになることに、周囲から反対する声も少なくなかった。

「親からは当然、反対されましたね。そのときはトゥクトゥクの現物もなかったから、親からすると半信半疑だったでしょうね(笑)。その後、トゥクトゥクが納車されたのを見て、『きれいに作ったな』って少し考え方が変わったんです。だけど、『恥ずかしいから乗りたくない』というので、友人や親せきを呼んで試乗してもらうことにしたんです。これがすごく好評で、その声が親に伝わってようやく理解してもらえたんです」

 いよいよ足立さんは46歳にして、念願だったトゥクトゥクを使った新商売に挑戦することに。46歳というと、家庭を持って安定志向になっていてもおかしくない年齢だが?

「自分には40代だから……という感覚がなくて、今も気持ち的には若い頃のままなんですよね。ふと我に返って年齢的な焦りを感じるときもありますよ。あのとき結婚していたら、今頃、20歳くらいの子供の父親になっていたんだろうなって。だけど、逆に言うと、独り身で背負うものがないからこそ、こうして新しいことに挑戦できるんですよね。家庭を持っていたら、それこそ安定志向になって会社勤めを続けていたかもしれない」

次ページ:夢はフランチャイズ

前へ 1 2 3 4 次へ

[3/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。