妊娠を告げたら夫が豹変! 幸せな結婚生活が一転「世にも奇妙な物語」に

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「発達障害」が原因と気づいたのは何年も後だった

 そう言われるうちに、私としてもわからなくなってきた。

 妊娠もつわりも初めてで、知識もなく、妊娠がどれだけ体に負担がかかることなのか、頑張れない自分が本当に怠けていないのか判断がつかず、どんどん自信がなくなっていく。そうして「妊娠している私がよくわからないんだから、彼が理解してくれなくてもしょうがない。きっと怠けているだけなんだ、私が変わってしまったから、私の頑張りが足りないから、彼はずっと怒っているんだ」と自分を責めるようになった。

「もう甘やかさない」というセリフにもショックを受けたが、「『釣った魚には餌をやらない』と世間一般で言われているくらいだから、ただ言ってみたかったんだろう」と無理に自分を納得させた。

「怠けているだけ」と自分を責めたところで、つわりもだるさも眠気もなくならない。辛い気持ちになるだけなのだが、「自分が悪いのなら、悪いところを直せばこの状況から抜け出せる」と思ったのかもしれない。

 さらに、逆効果だとも知らず、びっくりするような酷いことを言われるたびに、私は「なんでそういうことを言うの? どうしてそう思ったの?」と繰り返し彼に尋ねていた。

「なんで、どうして」と聞くたび彼が逆上することに、長いこと気が付かなかった。

 感情表現やコミュニケーション方法が異なるカップルの間に、ひとたび「問題」が起こってしまうと、それを解決するのは非常に困難であること。そして、その感情表現やコミュニケーション方法が異なる理由のひとつに、いわゆる「発達障害」が考えられることを私は全く知らなかった。

 もし最初から知識があったら、ここまで傷付くこともなかったと思う。

 ある日突然、豹変したように感じた夫は、特性ゆえにどう返事をすればいいかわからないと無言になる人だったのかもしれない。

「なぜ」という質問をされるとパニックになり、わからないことが許されないと思うと自分を守るために怒る。どこかで聞いた話を一般的かどうか検証することなく当たり前だと思い込んで口に出してしまうことも少なくなく、近くにいる人の感情の揺れにストレスを感じるなど、環境の変化に弱い……人だったのかもしれないということだ。

 感情表現とコミュニケーション方法、そして社会からの情報の受け取り方。それらが違えば、同じ体験をしていても見えている世界が変わってしまうのに、お互いにそのギャップに気付かなかった。

 そして6年間という短い結婚生活の中で、私は心身ともにボロボロになり(ちなみに“私は”と言ったのは、“私だけが傷付き夫は傷付いていない”という意味ではなく、確認できる自分の状態だけを述べるに留めた表現である)、「これってもしかしてカサンドラ!?」と思うに至った。

 私がなぜ自分を「カサンドラ」だと思ったのか。そして「カサンドラ」からどうやって卒業したのか。順を追って書いていきたいと思う。

〈次回につづく〉

星之林丹(ほしの・りんたん)
1982年、東京都生まれ。結婚を機に制作会社を退職してフリーランスに。6年で離婚、2児の母。

2019年4月15日掲載

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