サイン盗みに蓋した「高野連」の粉飾体質 トラブル続き、“もはや球児虐待”の指摘も

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ユニホーム出演で“処分”

 高野連の常識はずれなエピソードは枚挙に暇がない。

 昨年12月、高知商業の野球部員が同校のダンス同好会の発表会にユニホーム姿で出演。ダンス同好会がチアガールとして甲子園での応援に華を添えてくれたことへの恩返しだった。

 ところが、この発表会が500円の入場料を取っていたことで〈野球部員の商業的利用〉に当たる可能性があるとされ、高野連は一時、野球部長の処分を検討したのである。

 これには同校OBの野球評論家・江本孟紀氏も、

「明らかに高野連の過剰反応で問題にすること自体がおかしい。お金について言うのなら高校野球だって甲子園の入場料で何億円もの収益を上げています。何でも口出しすればいいというものじゃないでしょう」

 と憤りを隠さない。

 確かに、昨夏の第100回記念大会の収入は、史上最高額となる7億8千万円を記録している。

『甲子園への遺言』の著者で、ノンフィクション作家の門田隆将氏が続ける。

「高野連が、球児の無償の奉仕によって莫大な利益を上げていることは厳然たる事実です。昨年から外野席でさえ500円の入場料を徴収しています。果たして、そうした利益は球児たちに還元されているのか。高野連は朝日や毎日、NHKなどのOBを職員として受け入れながら、その給料すら明らかにしていませんが、こんなことがいつまで許されるのでしょうか」

 美談で粉飾しながら、球児に過密なスケジュールを強いるのは、「もはや球児虐待と言われても仕方がない」(門田氏)

 真偽はともあれ、今回の騒動でも高野連は当事者の訴えをろくに聞かず、何事もなかったかのように幕を引こうとしている。球児たちの悲愴な面持ちを、その美しい物語の表紙で覆い隠し、ただひたすら自分たちの栄華を守るために。

 甲子園を目指す少年たちの「汗と涙」の物語。それが、球児らにとって不正発覚に怯えて流す「冷や汗」や、連投の果てに肘を壊してこぼれる「悔し涙」であってはならない。

週刊新潮 2019年4月11日号掲載

特集「高校野球は汗と涙の物語か 『星稜vs.習志野』サイン盗みに蓋をする粉飾『高野連』」より

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