「久世福商店」は5年で全国73店舗 創業者が語る“食のセレクトショップ”誕生秘話

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「ザ・ジャパニーズ・グルメ・ストア」をコンセプトに、各地の生産者と一緒に開発したこだわりの食品を集めた「久世福商店」。お値段はやや高めでも、他店ではなかなか手に入らない逸品揃いが人気で、いまや北海道から沖縄まで全国に73店舗を構えている。由緒ありげな店名や、店内には味噌樽が並ぶ佇まいから、地方の老舗が全国展開したと思っている方も少なくないだろう。

 第1号店が出来たのは2013年12月、わずか5年前のことだ。運営しているのは、元々、長野県でワインやジャム、パスタソースなどのグロサリーを製造販売しているサンクゼール社だ。意外なことに、創業者は東京生まれの東京育ち……なぜ長野で久世福商店を? ご本人に話を聞いた。

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 大正ロマンをイメージしたという純和風の店舗には、「島根県隠岐諸島産 天然わかめと海藻スープ」(税込み637円)、「七輪手焼き 鶏の炭火焼き」(同421円)、「屋久島さば節屋のさばスモーク」(同453円)など、全国各地の逸品がズラリと並ぶ。これらは同社の5人のバイヤー(当初は2人)が全国をかけずり回り、生産者と一緒に開発したものだ。しかもレシピを聞いて同社が製造するのではなく、現地で製造されたものを仕入れ、販売するという手法を取っている。日本の食品に特化した久世福商店の本社「サンクゼール」は長野県にある。

 長野駅から北へ、りんごの木を眺めながら車でおよそ40分、上水内郡飯綱町にある「サンクゼールの丘」にはまだ雪が残っていた。そこには周りとは不釣り合いなほどモダンな、軽井沢にあるかのようなレストランや洋食材の販売店舗があった――。

「遠くまでようこそ。本日はよろしくお願いします」

 現れたのは、サンクゼール並びに久世福商店の創業者である久世良三会長だ。1950年生まれの69歳。昨年(18年)6月に社長を長男・良太氏に譲り、自身は会長となった。

久世:昔、スキーで頸椎を痛めましてね。それが悪化してきて手術をしました。集中力もなくなり、体力も落ちた。そんな状態で社長を続けるのは無責任だし、「久世福商店」も軌道に乗ったところでしたので、会長に退いたんです。

――見たところ、かなりお元気な様子だが。

久世:お陰様で! 手術も上手くいきましたし、こんなことならもっと早く手術すればよかった。でも、今さら社長に復帰しようとは思いませんよ。長男に任せていますから。

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