インフル特効薬「ゾフルーザ」の弱点が発覚 提灯番組を放送した「テレ東」の見識

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社長までヨイショ

 番組では「WBS」同様、インフルに罹った患者が医者に行き、1回飲めば済むことからゾフルーザを選び、劇的な効果があった様子を映し出す。ウイルスを排出しなくなるまでに掛かる時間は、「タミフル:72時間」「ゾフルーザ:24時間」と圧倒的な効き目であるという。

 そして、この新薬を開発・販売するシオノギ製薬(正式には塩野義製薬)を紹介。わざわざフジテレビから借りてきた「ミュージックフェア」の映像まで流しながら、ナレーションはこう言うのだ。

〈長寿番組「ミュージックフェア」でお馴染み、前回の東京オリンピックのあった1964年から1社提供で放送し続けている。代表的な薬は、解熱・鎮痛剤の「セデス」やビタミン剤の「ポポンS」など。しかし、こうした市販薬の売上は全体のわずか2%程度。ほとんどは医師から処方される薬で稼ぐメーカーだ〉

 民放他社のディレクターが言う。

「もともとWBSでも昨年の発売開始の頃から、何度もゾフルーザを取り上げていましたから、熱心に報じていたことは間違いありません。『カンブリア』には、ゲストにシオノギの手代木(てしろぎ)功社長を迎えていましたが、ゾフルーザの報道があったその日でしたから、タイミングが悪すぎます。手代木社長が経営に当たるようになり、10年でシオノギの価値は5倍になったとか、その手腕が“手代木マジック”と呼ばれているとか……シオノギは『WBS』や『カンブリア』の提供はしていませんが、いくら何でも持ち上げすぎでしょう」

 とはいえ、「1つの新薬ができるまでに予算は1500億円前後、期間は早いものでも9~10年は掛かる」という社長の言葉には、一般人には大変だなあと思わせるものがあった。それが手代木社長の代となってから、十余年で7つの新薬を開発したというのである。

「ゾフルーザの場合を具体的に番組で説明していましたが、短くても5年は掛かるという臨床試験を、手代木社長が『半分の期間でクリアしろ!』と命じたというシーンで、さすがにアチャーと思いました。担当者が3年で臨床試験を済ませたことを苦労話として報じていましたが、“臨床で耐性ウイルスが出ていた”って発表の直後だったでしょ。それに、“排出するウイルス量が減ること”が本人の症状改善や重症化を防ぐか、また、他人に伝染する可能性が下がるかについては、まだわかっていないそうなんです。もちろん承認もされているわけですから問題ないのでしょうが、『臨床を大慌てでやったせいじゃないのか』などと誤解する視聴者もいるかもしれません。また、番組内でゾフルーザを推奨していた医師が、インフルエンザ薬の使い分けの重要性について、放送の数日前に医薬品専門紙に執筆しているくらいですから、注意事項くらい入れても良かったと思います。薬事法違反とまでは言いませんけど、ちょっと飛ばしすぎでしたね」(同・民放ディレクター)

 持ち上げるのもほどほどに――。

週刊新潮WEB取材班

2019年2月3日掲載

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